第52話  迫る危機

 56-052

小南は小島部長が大いに喜んだ話を美沙にした。

美沙は「潜入取材の成果が認められたのね!髪を切った甲斐があったわ」

「来週第一弾が発売されるから、ノー天気親子は有頂天になるわね!お父さんの方は順調?」

「順調らしいわ、ほぼ毎日心配して電話を掛けてくるわ」

「そりゃそうでしょう、箱入り娘がいきなりクラブに潜入取材!それも金髪にしての決死の潜入だからね」

「みどり青果の事も判るかも知れないから、もう少し頑張ってみるわ!専務のあの様子なら来週位にお店に来るわ!もっと大きなスクープを待って」


モーリスの特集記事の号が発売されて松永部長も上機嫌で記事を読んでいた。

「この記事を読めば、千歳製菓の売上げが三割は増えますね」

「もしかしたら五割増も夢じゃないかも知れないぞ!村井課長も災難に見舞われたが、その様な記事は何処にも書いて無い!先ずはめでたしめでたしだな」

「はい、私も心配はしていましたが、娘の誘拐は寧ろプラスになった様で安心しました」

その時に「部長!お電話です!」と女子事務員から内線があった。

「誰からだ?」

「名前をお聞きしたのですが、部長に直接話すと言われまして、悪戯電話でしょうか?」

そのまま電話を取ると「松永さんに買って貰いたい記事が有るのですが」

「君は誰だ!」

「そうですねJクラブとでも名乗りましょうか?」その言葉に松永は凍り付いた。

「何を幾らで買えと言うのだ!」

「メールを部長宛に送りますよ!アドレスは最初がmatunaga@でしょう?金額は一億です!駄目なら週刊誌に売りに行きます」

「馬鹿な!一億なんて払えるか?」

「そうでしょうか?ご覧になれば直ぐに支払いたくなりますよ!今日は良い記事が出ましたが、来週は吹っ飛ぶ様な記事になりますよ!ははは…」

電話が切れると村井課長が松永部長の唯ならぬ様子を見て「どうされたのですか?」

「いや、悪戯電話だ!気にせずに席に戻りなさい」

直ぐにパソコンのメールを調べるが、何も受信はしていない。

だがJクラブの事を知っている人間には間違いが無いと、顔が硬直する。

その時メールが届いて、部長の顔が蒼白になった。

「先程の方から電話です」と再び電話があった。

「ご覧頂きましたか?一億払う値打ちが有るでしょう?お支払い頂ければこの事実を知っている者を教えますよ!現金で準備して下さい!」

「いつまでだ?」

「来週ですね!月曜日にしましょう。払う意志が決まれば連絡下さい!メールに返信頂ければ大丈夫です!受け渡し場所はその時に。それでは糀谷専務とご相談下さい」

「ま、まて!」と言ったが既に電話は切れていた。

松永部長は直ぐに糀谷専務に電話をするが、今日は自宅に居るので出社はされないと秘書が言われた。

松永は急いで車を飛ばして糀谷専務の自宅に向った。


「どうしたのだ!慌てて何か一大事か?」

「専務大変です!Jクラブと名乗る男が、この様な記事を買って欲しいと言って来ました」

「Jクラブ?記事を買え?」

「幾らだ?」

「一億だそうです!」

「何!記事を見せてくれ!」

ノートパソコンを立ち上げると、そこにはJクラブの存在、桐谷と言う偽の役所職員が現在村中工業に隠れている。他にも有るが今回はこれだけで充分だろう?と書いてある。

「この様な事実が表に出れば、我社は終りです。土地転がしの事実も露見してしまいます」

「Jクラブの存在を知っているのは誰だ?」

「黒木マネージャー、新垣社長、沙紀子ママ、洋子さん、それ以外は私達だけです!派遣されているJクラブ所属の女達も多少は知っていますが、その様な事を話す筈がありません」

「松永!私でも新垣社長から聞くまで桐谷の職場は知らなかったのだぞ!この男両方を知っている。誰だ?!」

「あの時、新垣社長と私と三人でした!ママもチーママも聞いていません!社長が誰かに喋ったのでしょうか?」

「それは絶対に無い!松永!もう一人あの部屋に居たぞ!」

「新人ホステスの絢奈ですか?」

「そうだ!あの可愛い女だ!まだクラブに勤めているか確かめろ!ライバルの手先かもしれん?」

松永部長が黒木マネージャーに尋ねると「毎日出勤している様です」との返事だった。

「そうか!スパイなら、これ以上の何かを掴もうとしているな!」

「一億を要求してきた男とグルでしょうか?」

「違う可能性も有るな!今日脅迫してきた後にまだ働いたら危険だろう?」

「では、関係無いのでしょうか?」

「一応ママに連絡して監視させろ!持ち物にも注意だ!先日の時は完全に薬が効いて意識が殆ど無かったのは間違い無い!」

「すると録音でもしていたのでしょうか?」

「その可能性が一番高い、三人しか知らない事を知っていたのだからな!」

「もし、彼女の仕業ならどの様に致しましょう?」

「中々可愛い女だから、殺すには惜しいだろう。新垣に始末させれば良いだろう?」

「薬漬けで海外ですね!」

「この様な場合は暴力団の力が一番だ!だがあの脅迫してきた男が誰なのか?それを確かめなければ」

「仲間で無い可能性も有るとおっしゃいましたが?」

「もし彼女が犯人なら、仲間ではないとしても、誰かに情報を流したのかも知れないその人物を聞き出せは知っているだろう?」

「なるほど!自白させるのですね!」

「手荒な事をして品物に傷を付けたら駄目だぞ!あの娘なら高く売れる!」不気味な笑みを浮かべる糀谷専務。

美沙に危険が迫っていた。


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