第46話   一方的

 56-046

翌日、大阪から戻った小南と美沙は三木と木村を交えて、お互いの情報の交換と今後の対策、そして本社に提出する原稿の話を一日中話し合った。

① ひき逃げの犯人が今も見つからないが、新和商事とモーリスの一部の人間が繋がっている可能性が有る様だ。

② 北新地のクラブJは新和商事の社長の行きつけで、モーリスの上層部は客として行くので、店内では交流が有る可能性は高い。

③ 岡山のみどり青果の情報は途切れた状態で、モーリスのバイヤーだった安田との関連は不明。

④ 偽の役所の職員桐谷が新和商事の人間の可能性が有るが不確定。

⑤千歳製菓の実情をいつ本社に報告するか?

モーリスを欺く為に、小島部長にも内密で進めている作戦だから、四人は多少後ろめたい気分だ。

だが、この計画が成功すると必ず賞賛されると信じている。

「クラブJに何か秘密が有る様な気がするけど、どの様に探れば良いのか判らないわね」

「ホステスとして潜入するのは?」

「私は先ず採用されないわ!美沙なら採用されると思うけど、マスコミに顔が出てしまったから面接で駄目ね!」

「そうだった!私マスコミに顔出たのでした。少しだけど」

「それに潜入が敵に見つかったら殺される可能性も有るわよ!木村さんも殺されかけているのだから」

「そうですね、暴力団が裏にいるから恐いですね、他に方法が無いのであれば取り敢えず常務に探りを入れてみます」

「一応千歳製菓は何とかなりそうだから、ひき逃げ事件で早く警察を動かしたいわね!」

四人の話し合いは続いた。


数日後、美沙は小南と一緒にクラブエデンの近くの寿司屋に居た。

勿論上機嫌でエスコートしているのは京極常務。

「親父が自分の記事が出るのなら、エデンを紹介すると言って店で待っているそうですよ!」

「えっ、社長が?」

「ここへも同席したいと言ったのですが、断りました。僕と美沙さんの中に親父が入ると嫌ですからね」

だが、寿司屋のカウンターには、母親の貴代子が陣取って聞き耳を立てていた。

貴代子はちらちらと美沙を見ながら美人ね!あの子が惚れる筈だわ、後は家柄だわね!将来の社長夫人になるのだから」と独り言を呟いている。

常務は、小南が余分だと思いながらも話を仕事以外の事に移そうとする。

美沙の趣味とか家庭環境を尋ねると「父は小さな会社で営業の仕事をしていました。でも社長さんが代わられて営業職から工場の仕事になりました」

「営業から工場内の勤務ですか?大変でしょうね?慣れない仕事で、毎日時間がもの凄く長く感じると思いますよ!」

「それで、元気がありません!父が可哀想です!」

「けしからん社長だな!美沙さんのお父様を苦しめるなんて!きっと能力を見抜けない間抜けな社長だ!」そう言って怒って見せる。

小南は笑いを抑えるのに太股を自分で抓って必死で我慢していた。

「父には能力が有るのでしょうか?」

「それは社長が見抜けないのでしょう?最近社長になったのでしょう?」

「そうです!社長の義理の息子さんで二代目です」

「それは益々駄目な男だ!二代目で養子!最悪ですね」

常務は自分で勝手に養子と決めてしまう。

「また機会があれば常務さんに、その社長を見て頂きたいわ」

「判りました!是非!」

「その時は一緒にお願いしますね!この辺りでもよく飲まれている様ですよ!」

「見かけたら教えて下さい!僕が苦言を言って上げます!」

「頼もしいわ!」と言った時、貴代子が常務を呼んでいた。

常務が席を離れた後、小南は我慢できずに一気に大笑いをした。

「美沙!面白すぎだわ!お腹が痛い!お手洗いに行ってくるわ」と席を立ち常務の後を追い掛ける様に向う小南。直ぐに戻って来て「常務が向こうのカウンターの女性と話をしているわ!」

「気にしない!多分母親よ。父親も来ているのだから一家総出ね」そう言って笑った。

「そうだわ、会社に取材に行った時に居た常務の母親だわ」と小南が思い出して言った。


しばらくしてから、三人は父親の待つクラブエデンに向った。

貴代子とは美沙が小さい時に会っているのだが、父の京極隆史とは一度も会ったことがないので多分赤城の娘だとは判らないだろうと思っている美沙。

「大きなお店ね!」

「高級なお店って感じだわ!」

二人は怖々入ると、黒服がやって来て「京極様のお連れの方ですね?」と直ぐに案内をしてくれた。

大きなボックス席にホステスの留美子と二人で座っていた京極社長が立ち上がって二人を出迎えた。

「息子から噂には聞いていましたが、噂以上の美人さんだ!晃には勿体ないな」

そう言いながら自分の隣に座らせる。

渋々常務は横に座って小南は社長を挟んで反対側に座った。

「こりゃいい!両手に花だ!」上機嫌の京極社長」

既に酔っ払っているのか頬が赤い。

前の椅子に瑠美子が座って三人に挨拶をする。

「このお嬢さん達がウィークジャーナルの記者さんで、小南さんと赤城さん!そして、こちらがこの店のナンバーワン瑠美子さんだ!」と紹介した。

「瑠美子さんが元大阪の新地のホステスさんですか?」

美沙が早速確かめる。

「そうだ!北新地でもナンバーワン、この店でもナンバーワンだ!」

「お綺麗な方ですね」

「赤城さんも素晴らしく美しいお嬢様ですわ!息子さんとはお似合いですね」

「えっ!」驚く美沙とは反対に常務は「恥ずかしいな!」と頭を掻きながら照れている。



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