第35話   新たな事件?

 56-035

三人はその翌日から原稿の整理をして、記事に纏め上げて数日後本社に送った。

美沙は提出後「納入価が腑に落ちないので一度神戸に行って聞いて来ます!もしも時間が許すなら玉露堂さんにも話を聞きに行ってきます。行きます」と小南に話した。

「美沙!もう取材期間終ったから費用も出ないわよ!また有休で行くの?」

「このままでは、京極社長を説得出来ません。来週の週末休みます」

その様な話をした夕方、小南が支店長に呼び出された。

「小南さん!実は本社の小島部長が、君達三人が提出した記事が非常に興味深いのでもう少し詳しくその後を調べて欲しいと依頼があったよ!」

「えっ、それでは取材を続けられるという事ですか?」

「そうだ。寺崎食品の親子の消息、千歳製菓のその後、不動産会社の実態等を存分に深堀してくれ」

「いつまでですか?」

「二弾、三弾と続ける予定なので、十月までのロングランだ!」

「連載ですか?!」

「そうだ!応援が必要なら後二人は廻せるが?」

「今は三人で頑張ります!木村さんが回復すればお願いするかもですが、当分無理ですよね?」

美沙が有休で取材に行かなくてもよくなったこと!取材続行になり、有休を取らなくても堂々と取材に行けるったことを小南は直ぐに美沙に携帯で知らせた。


翌週から、社長賞も夢では無いとの支店長の言葉に三人は前よりも張り切って取材に奔走した。

三人はそれぞれ分かれて取材に出た。

小南は寺崎食品関係、三木は不動産屋、そして美沙は日にちを前倒して神戸の小諸物産へと向った。


美沙は、神戸駅まで来てから小諸物産に社長の在社確認の連絡を入れた。

事前に言うとまた神戸駅まで来てくれそうで気の毒な申し訳ないので受付の人に在社だけを確認した美沙。午後一番に行くと伝えてもらった。ると、食事をご馳走しましたのにと言われたが既に済ましている。

神戸駅からバスで、約一時間。で到着すると小諸社長は態々玄関で待っていてくれた。

「何か新しい事が判りましたか?」

「今日は社長に是非見て頂きたい資料が有るのです」

「何でしょう?」

「千歳製菓が来年から始めるモーリスの頒布会の資料です」

「その様な秘密書類がよく手に入りましたね」

「えっ、お父様から頂いたのですか?」

「いいえ、京極常務から頂きました」と神妙な面持ちでテーブルに資料を広げた。

「この資料を見る限りでは、千歳製菓は充分な利益が残って普通の取引だと思うのですが?何故この様な利益を得て、他社は倒産に追い込まれたのでしょうか?」

「本当ですね!これなら充分商売になりますね」資料を見ながら小諸も言った。

「今納入している商品も、利益を上げていると京極常務は話していました」

「何か絡繰りが有るのでしょうね?玉露堂の富田社長に尋ねたら判るのでは?」

「夕方にお邪魔させて貰う事になっています」

「私もそれなりに調べて見ましょう、このリスト頂けますか?」

「勿論です。小諸社長にはいつも助けていただきありがとうございます。宜しくお願いします」

「それから、良くない情報を掴んだのですが・・・」

美沙は、寺崎食品の母親と息子が貢の消息不明で二人が復讐を計画しているのではないかと祖父母から相談を受けた事を話をした。


すると「今、復讐と言ったのですか?それなら当時の担当者を調べましょうか?私が商談に行った時期と重なるのなら、名刺が残っているかも知れないです。捜してみましょう」

「でも、今の担当者は全て若い人です」

「モーリスは五年も担当者が同じ人はいないのです。若い人が多い!」

「その五年後は何処に配属されるのですか?」

「上層部になる人、関連会社に行く人様々ですがバイヤーは基本的に若い時だけですね」

「すると寺崎食品の担当者は、既にバイヤーでは無いですね!」

「息子さんと奥さんも会社に復讐は出来ないでしょうね!多分に対する恨みではないでしょうか?」

「警察に相談でしたところで、事件が起こらないと警察は動いてくれませんからね。ましてや、本当に復讐するのかもわからないので」


すると「今、復讐と言ったのですか?」

小諸社長は少し考えてから

「息子さんと奥さんも会社に復讐は出来ないでしょうから多分、個人を狙うのではないかと思うのですが」と言った。

「私たちもそう考えています。二人の行方が分からないので、当時の担当者を捜しだし事件を回避させなければと思っています。」

「でも、今の担当者は全て若い人ですから、五年前の寺崎食品の担当者はいないでしょうね。モーリスのバイヤーは五年で配置換えになるみたいです」

「その五年後は何処に配属されるのですか?」

「上層部になる人、関連会社に行く人様々ですがバイヤーは基本的に若い時だけですね」

「すると寺崎食品の担当者は、既にバイヤーでは無いですね!」

「私も捜してみますが、モーリスに直接聞きに行く事は出来ないので、どうやって捜せばよいのか・・・」

「事件が起こらないと警察は動いてくれませんよ。ましてや、本当に復讐するのかもわからないのでは、警察に相談は出来ないですしね」と言った後二人は無口になった。

少ししてから、小諸社長が「私が商談に行った時期と重なるのなら、名刺が残っているかも知れないです。捜してみましょう!」と言ってくれた。

美沙は結局不安が増大しただけで、後は小諸社長に託して京都の玉露堂に向った。


だが、玉露堂では、社長は先日の態度とは大きく変わって「記者の方にお話する事はありません!それに今来客中ですからお帰りください」と愛想悪く玄関先で追い返されそうになったが、美沙は粘って「唯、一点だけお聞きしたいのですが?モーリスさんで利益は有るのですか?」と聞いた。

話を遮るように「儲かる、儲かる!今日は駄目だ!」と言って社長は美沙を追い返した。

美沙は、もしかして来客しているのはモーリスの人間?態度の急変はその為かもしれないと思った。

もしもモーリスの人なら話が聞けるかと考えた美沙。

筋向えに都合良く喫茶店が在るので、そこで待ち伏せをする事にした。


待ち構えていると、半時間も経たない間に二人の男が玉露堂から飛び出してきた。

年配の方の男は、もの凄く焦った様子で若い男に何か話すと、タクシーを止めて一人で乗り込んで走り去った。若い男はそのまま駅の方に歩いて行く。

美沙はその男の後を尾行しようと思ったが、年配の男性のただならぬ様子に玉露堂の方が気になり、その男たちの事を聞こうと玉露堂に再び入った。

「まだいらっしゃったのですか?先程は焦りました!実はモーリスの村井課長と担当者が急に来られて、千歳製菓さんとの販売数の変更を相談に来られたのですよ!」

「何故ですか?」

「週刊誌に特集記事が掲載されると、千歳製菓の常務さんがモーリスに連絡された様で」

「何処の週刊誌ですか?」

「大きな週刊誌としか聞いていません!でも、話の途中で村井課長の自宅から電話があって、二人は急遽帰られたので具体的な事は決まりませんでした」

自宅からの電話で仕事を投げ出し慌てた様子でタクシーに飛び乗った?何か大きな事件でもあったのだろうか?美沙は背中に冷たい物を感じた。

すぐに、今起きたことを小南に連絡した。その後事をお願いした。美沙は、モーリス商談の絡繰りが知りたかったので玉露堂の社長に話の続きを聞いた。


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