第36話  新たな展開

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「この納入価格が罠なのですよ!既にモーリスは原価計算を策定して、支払いサイトも百二十日になっていると思いますよ!」

「いいえ、千歳製菓の常務は六十日だとおっしゃいました!」

「それは今の支払いサイトでしょう?頒布会が始まると同時に百二十日になった筈です!納入価については、来年の企画は我社との共同企画ですから、高く設定しているのです」

「何故ですか?」

「魚を魚籠に入れるまで安心しないのがモーリスの手法です」

「機械の様に商品を作らされる工場になるのですか?」

「そうです!当社の様に従業員も最小にして、家族に働かせてぎりぎりの生活を強いられるのです」

「えー、それってまるで奴隷のようですね!」

「来年の頒布会を切り抜ければ、京漬さんの様な取引がモーリスと出来るでしょうが、これも同業他社の協力が無ければ実現不可能です!」

「社長は京漬さんをご存じなのですか?」

「勿論知っていますよ!泉田さんの苦労があったので奴隷の道を進まなかったのです。私ももう少し早く気が付いていたら、・・・今となってはもうどうにも出来ません!」

「先程の方はモーリスの村井課長ともう一人は何方ですか?」

「モーリスの村井課長と部下の庄司さんです。が、庄司さんは私の会社は初めてで、それで村井課長が紹介も兼ねて連れて来たのですが、あの慌てようは唯事では無いですね」

「課長さんは外でタクシーに乗られましたが、庄司って若い方は歩いて駅に向われました」

「自宅で家族が交通事故かな?顔面蒼白になりましたからね!確か子供さんは二人で下の子供さんは小学生だと思いますね!子供さんが事故でしょうか?電話口で名前を呼ばれていましたからね!」

美沙はこの話を聞いて七年か八年前に村井課長が寺崎食品の担当だったのではないのかと不安が過ぎった。

「村井課長さんって昔寺崎食品の担当をされていませんでしたか?」

「沢山取引の会社が在ると思うので、私も何方が何処の担当かはまでは判りませんね!寺崎食品って数年前に倒産した会社ですよね」

「そうです!もしかしたら村井課長、事件に巻き込まれた可能性もありますよ!」

「えっ、寺崎食品の担当が村井課長だったら何故事件になるのですか?」

「まだモーリスの実態が判りませんので、詳しいことは話せませんが可能性は無いとは言えないのです!寺崎食品の息子さんが復讐を計画しているかもしれないのです」

「えー!それは大変だ!村井課長が以前寺田食品の課担当だったか、モーリスに聞いてみましょうか?」

「事実は全く判りませんので、大袈裟に言われない様にお願いします」

富田社長は美沙の前でモーリスに電話をして、村井課長が過去に寺崎食品の担当だったのかを確かめた。

どうやら、電話に出たのが自社玉露堂の担当者のようで結構気軽で気さくな会話に聞こえた。

電話が終わって「調べてくれるようです!この男も村井課長はライバルですから、相手の問題には直ぐに飛びつきます」

「大きな会社はそれなりに足の引っ張り合いをしますからね」

その様な話をしていると電話が鳴り「村井課長は昔寺崎食品の担当をしていたが、何かあったのか?」

「尋ねられただけで、何もありませんよ」

「何か有るのだろう?」

「えっ、どうしてですか?」

「今日は君の会社に行った筈だが、少し前に早退届けが電話で来たようだ!君の会社で何かトラブルか?それとも家族に何かあったのか?」

「いいえ、商談を終って帰られました!庄司さんも一緒に帰られましたよ」

「何故?急に寺崎食品の事を尋ねたのだ!教えてくれ!」

美沙に電話の途中だったか社長に、黙礼をして玉露堂を後に飛び出した。

美沙は玉露堂を出るなり小南に電話掛けた。

「小南さん!ついに事件が起こったようです」美沙の言葉に驚く小南。

「何が起ったの?」

「モーリスの村井課長の子供さんに何かが起ったようです!村井課長は寺崎食品の元担当者です!」

「えー!そ、それじゃ寺崎親子が何か行動を起こしたかもしれないわね!直ぐに調べるわ!貴女もそのまま村井課長の自宅に行って!」

「すみません。自宅の場所を知りません」

「判った!調べて連絡するわ!待って」

小南は以前に貰った名刺で愛知県警の三宅刑事に電話をして事情を話した。

三宅刑事は事情を理解してくれて直ぐに調べて判り次第連絡すると言ってくれた。

小南は何か不審な事点があれば直ぐに連絡が欲しいともお願いをした。

今の時点では、事件の通報がないので警察は動くことはしていない。きはなかった。削除

村井課長は会社に早退の理由を告げていなかったので、警察から村井課長の自宅住所を聞かれた会社は、村井課長は会社に早退の理由を告げていなかったので、家族が交通事故なのか?と思っていた。

三宅刑事はこの時、交通事故では無いが、何かが起っている気配を感じていた。


小南の携帯に三宅刑事から連絡が届いたので、メールで美沙に村井課長の自宅の住所を送った。

小南の携帯に三宅刑事から村井課長宅の住所が届き、メールで美沙に送った。

大阪府吹田市の住宅街だったので、美沙はそのまま京都から電車で村井課長宅に向った。

新快速で新大阪まで行く間に美沙は、「復讐?子供?交通事故?」と呪文のように呟きながら考えていた。

「あっ、誘拐!?」突如口走った美沙。

今の状況で考えられるのは誘拐だ!小学生の女の子を誘拐した可能性が高い!小南に再び連絡をして自分の推測を話した。

「本当に誘拐なら大事件よ!犯人は寺崎の母子?」

「村井課長は昔寺崎食品の担当でした!」

「それならほぼ間違いないわね!どうする?」

「確証は無いから警察にも言えないし」

「でも三宅刑事さんの携帯番号聞いたから、直接話してみる?」

「一応教えて!でも誘拐事件だったら、大阪支店の協力で取材に成るわね!」

「美沙!解決したら社長賞に警察から感謝状も出るわよ!」

「一応教えてください!でも誘拐事件だったら、大阪支店の協力で取材ができるのでは?」

「美沙!でも誘拐事件だったら、大阪支店の協力で取材ができるのでは?解決したら社長賞に警察から感謝状も出るわよ!」

「そんな事はどうでも良いのです、子供さんには関係が無いでしょう?」

「そうねだったわ!無事に救出しなければ駄目ね」

新大阪駅に到着すると、美沙は意を決して三宅刑事に自分の推理を伝える為電話をした。



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