第31話 美沙の作戦
56-031
「娘がウィークジャーナルの記者で、モーリスの特集記事を書くために取材をしいていて
そこにモーリスとの取引が始まる我社の事も載せられるように考えてくれているのだよ」
「じゃあ、社に直接来れば良いのに、社長は雑誌のインタビューなら喜んで直ぐに承諾されるわ!」
「それが、娘の本社からは我社の取材依頼は無いところを娘が我社の為に記事を挟んでくれるらしく、取材内容次第みたいですね」
「それが娘の独断で我社の為にと取材してくれいて、まだ本決まりではないのでね、ましてや娘は、まだ一年目のぺいぺいなものだから」
「良いお嬢さんですね!でも、ウィークジャーナルの記者って凄いですね!」
「でもこの話は内緒にしていて下さいねよ!先に社内に知られると色々問題が出るのでね」
信紀は北川に適当な嘘を言って、新幹線のチケットのコピーを受け取る事に成功した。
「決っして絶対に危ない真似はするなよ!常務は女性関係では良くない噂がある男だからな!」チケットのコピーを手渡しながら再び再度忠告した。する信紀。
「大丈夫よ!上手くやる聞き取るわ」
両親の心配を他所に、美沙は翌日京極常務の座席の近くに三木と二人分の席を取った。予約した。
「グリーン車なんて初めてだわ!三木君は私と通路を隔てた隣のB席ね」
「でも変じゃないですか?混んで無いのに常務の隣のC席に座るのはと変なのでは?」
「良いのよ!私がナンパするのだから、積極的にチャレンジよ!」
「確かに美沙さんは美人だから、ナンパは簡単でしょうが、不自然ですよ!」
「大丈夫よ!上手く誤魔化すわ!」切符を買ってと自信ありげに微笑む美沙。
新幹線に乗る当日、初夏の暑さに美沙は薄着ミニスカートで、下着が透けて見えそうな服装で名古屋駅に来た。その姿を見た三木は驚いた。
「美沙さん少し刺激が強すぎませんか?」
「そう?それより京極常務を探して!これならナンパ出来る?」
「美沙さん、俺、常務の顔を知りません」
その後ホームで新幹線の入線の風が美沙の髪を乱し、スカートを大きく巻付ける様な悪戯をする。
二人は京極常務らしい男性を探した。
顔を知らないので判らなかったが、美沙を少し離れた処で京極常務は見ていた。
京極常務は、少し離れた場所から美沙を見ていた。
「席は分かっているから慌て捜すことはないわね。でも、近くにいると思うから会話には気を付けて!」
「はい!」そう言った時、新幹線がホームに滑り込んで来た。
美沙は新幹線に乗る前にもう一度周りを見ると男と目が合い直ぐに目を逸らした。
「見られたかもしれないわ!作戦変更するから、私の言う事にだけに返事してね!」
「・・・」三木は、美沙の言っている意味が理解できず返事ができないままに新幹線の扉が開くのを待った。
早くも美沙の容姿に興味を持った京極常務は、何処に美沙が座るのかを見ていた。
美沙は、背中に視線を感じながら座席に向うと「あなた取る座席間違えたの?十番のCってここよ!席が離れてしまっているじゃない」
後ろから美沙を追い掛ける様に付いてきた京極常務が「座席を間違われたのですか?そこは私の席です」そう言いながら窓際の席に座って「どうぞお座り下さい!発車しますよ!」と美沙に席に着くように促した。京極常務は上機嫌だった。
今日のグリーン車は不思議と混んでいて、七割の客が座っている。新幹線が動き始めると
三木は直ぐに自分の座席に座った。
「三木君!隣の席は空いているのかな?車掌さんに尋ねてみて?」
丁度そこに車掌が来たので「ここの席あいていますか?」と尋ねた。
「次の浜松で乗ってこられますね!」
美沙は予め浜松から三木の隣の席の切符を買っていたのだ。
「仕方が無いわね、通路を挟むけど本社の会議の資料纏めましょう」
「は、はい」三木は訳も判らずにとりあえず返事をした。
「今度の特集記事で来年発売のモーリスの頒布会を取り上げるのに、新規のメーカーを特集に掲載する事になっていたわね!」
「は、はい」
モーリスと新規のメーカーと言う言葉が京極常務の耳に入り、聞き耳を立てたる京極常務。
「でもまだ新規取り扱いメーカーが判らないから、記事に出来ないわね!本社の会議で判るのかしら?」
「は、はい」
美沙はいつ京極常務が話しかけてくるのか、その時を待っていた。
「新規のメーカーがどの様な品物を頒布会に出すか判れば良い宣伝になるのにね!」
「ウィークジャーナルに掲載されたら効果絶大ですよね!」三木も美沙の目的が漸く判ったのか、さらに大きな声で京極に聞こえるように話をした。
「あのー?」とついに京極常務が声を掛けてきた。
「はい!何か?」
「貴女はウィークジャーナルの方ですか?」
「声が大きかったですか?すみません」
「いえ、少し聞こえたのですが、ウィークジャーナルでモーリスの特集記事を掲載されるのですか?」
「聞こえてしまいましたね!モーリスと関係おありになる方ですか?」
「私は名古屋の千歳製菓と言う和菓子会社の者です」そう言って名刺を差し出す。
美沙たちも名刺を差し出し「私達はウィークジャーナルの編集記者です」と会釈をした。
「赤城美沙さんですか?先程の特集記事はいつ掲載されるのですか?」
「十一月の初め頃です。毎年モーリスの特集記事を企画しています。」
「先程話されていました新規取り扱いメーカーの記事も載せるのですとか?」
「内容が判れば、新規特集記事で大きく取り上げます。通常の倍程の注文が入るそうですよ!」
「記事が出るのは十一月でしたね?」
「はい。冊子は、会員とか新聞に出る前になりますね!だから私達の記事が大きな効果が有るのですよ!何故その様な事を聞かれるのですか?」
「実は私の会社、千歳製菓も来年からモーリスさんで頒布会が始まるのです」
「えっ、奇遇ですね!モーリスさんの頒布会に、新規ですか?」
「勿論頒布会は初めてです!今回はお茶屋さんとの共同企画ですがね」
「お茶屋さんと云えば、玉露堂さんとの共同企画ですか?」
「えっ、玉露堂さんをご存じなのですか?」
「はい!富田社長には何度か取材をさせて頂いたことがあります」
京極常務はこの話で完全に美沙の話を信じた。
「東京から戻ったら、美沙の名古屋支店にお伺いしたい」と言って東京駅で別れた。
「これで商品アイテムは確実に聞けるわね」微笑みながら京極常務の背中を見送った。
三木は美沙の行動力に一層好意を持った。
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