「鳩」におそわれた!

「クルックー、クルックー」

 ぼくはにらんだ。都心にある公園で、やたらと僕の後を追ってくる鳩がいた。

「なんだ?なんかようか?」

「クルックー、クルックー」

 こんなやつ無視するのがいいんだろうけど、どうも気になってしまう。

「クルックー、クルックー」

「はあ」

 ぼくは地面を蹴って砂を鳩にかけた。

「クルックー!クルックー!」

 すると、甲高く鳴いた。

 なんと、鳩の群れに囲まれてしまった!

「クルックー、クルックー」

 ああもううるせえ!僕を囲んで多くの鳩がバタバタと羽をはばたかせている。

 すると、5羽くらいの鳩がぼくの後ろの襟をつかんで空に舞い始めた!

 ああ、やめろ!やめてくれ!!

 しかし、その声も5羽の鳩と同時に飛び始めた鳩たちの翼のはばたきの音で消されてしまっていた。さらに、鳩に囲まれているせいで公園にいる人達からぼくが舞っていることが視覚から消されてしまっている。

 ああ参ったな。

 そのまま遠くへ飛ばされてしまった。鳩に囲まれて飛んでいるのでどこにいるのかすら分からないままに。


 着くとまわりが木々で囲まれた家であった。

 中を開けると、顔が雑巾のおじさんが、顔で床を磨いていた。

「おや、こんなところに人間がいるのかね?」

 クルックークルックーと、返事をするかのように鳩が鳴いた。

「はい、ぼくは人間です」

「おお、よくぞ来てくれた!」

 ぼくは鳩に連れ去られただけなのだが…

 話を聞くと、おじさんは数年前に顔をぞうきんにされてしまい、外を歩くことが億劫になったそうだ。

 だから、鳩が代わりに外に出ておつかいをしているとのこと。

「ぼくも何か磨いたほうがいいでしょうか?」

 おじさんに聞くと、そばにいた鳩がモップになった。

 ぼくもおじいさんといっしょに床を磨くことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る