#316 例のアレ

 博士の研究室に、大柄な男がやって来た。明らかにヤバい世界の住人だと見てわかる。

 息を呑む助手を無視して、男は博士に問いかける。


「おい、例のアレはできたか?」

「もちろん」

「そうか。すぐに用意しろ」


 博士は目を丸くして驚いた。


「え? すぐにですか?」

「そうだすぐにだ」

「例のアレはすぐには用意できません。一日かかるって知ってますよね?」

「…………」


 博士がそう言うと、男は黙ってしまった。

 博士が怪訝な顔をして男を見る。


「その反応……あなた、本当に例のアレ知ってるんですか?」

「知っているに決まっているだろ! 準備ができたら連絡しろ!!」


 男は怒鳴って部屋を出て行った。

 呆れる博士に向け、助手はこう言った。


「博士、例のアレってなんですか?」

「さあ? 私も知らないよ。さ、バレる前に夜逃げだ」

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