#315 創造の折り紙
──“創造の折り紙”という商品を知っているだろうか?
その単語はたまたま開いたSNSの、訳の分からない人が投稿した内容に書かれていたことだった。
俺がそれを目にした時、「まだそれを話題にする奴がいるんだ」と半ば呆れた感想を抱いた。
“創造の折り紙”。
単語だけであれば、知っている人はいるだろう。ネット上の噂のひとつ。怪しい話題。流行ったのは数ヶ月前。話題がコロコロと移り行く現代社会において、数ヶ月前はもう『古いもの』とされている。昼休みに話題としていた“創造の折り紙”も、今出せば「え? 今更?」「なにそれ?」「ほら随分前にはやったアレ」と言ったように、記憶から忘れ去られている話題を出す遅れている人となってしまう。
そんな“創造の折り紙”を今もなお話題にしている遅れている人として、投稿者は俺の記憶に残ってしまった。
──“創造の折り紙”ねえ……。
その内容は至ってシンプル。“創造の折り紙”で折ったものはまるで本物のように動き出す、というものだ。例によって実物は誰も見たことがない、空想の御伽噺。
……と言えればいいんだけど、残念ながらと言うか、光栄なことと言うべきか、俺はその“創造の折り紙”を知っている。なんなら持っているし使ったこともある。
だって、“創造の折り紙”と言うのは、簡単な話、タネを明かせば俺のもう一つの姿。高校生兼陰陽師の仕事道具。
つまり、“式神”だ。お札、式神、それらがどう言うわけか“創造の折り紙”として表世界に伝わってしまっているのだ。本来、こういった陰陽師の世界のものは、表世界には決して広まらないもの。しかし、どういう訳か広まってしまっている。“式神”ではなく“創造の折り紙”という話題で広まっているのは、まあ、言葉の響きを優先したのだろう。
だってかっこいいもん。“創造の折り紙”の方がさ。
とにかく、まずはこの投稿者のことを陰陽師連盟会に知らせて、これ以上表世界に広まらないよう対策を練ることだな。
「ねえ、天野崎くん。ちょっといい?」
そんなことを考えていると、クラスメイトの女子に声をかけられた。
……え? 女子に!?
「えっ? な、何かな……」
やばいまって女子と話すのは無理だって落ち着けせめて気持ち悪がられないように冷静に落ち着いてちゃんと真摯に──。
「この“創造の折り紙”って、天野崎くん持ってたよね?」
……………………………………………………この子、今なんて言った?
「天野崎くん?」
首を傾げる女子は、確か
数日前、陰陽師としての仕事中に遭遇し、助けた少女。
でも、あの時確かに記憶は消したはず……なんで覚えているんだ?
「…………」
「……?」
眠たそうに、おっとりとした目と雰囲気が特徴のクラスメイト。
なにも言わない俺に対して、首を傾げている。
……うん、とりあえず姉さんに連絡して、対応変わってもらおう。
俺じゃなにも話せないもん。
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