#228 音の世界

 世界は今、音にあふれている。

 音はなんでもいい。車の走る音、電車の走る音、革靴が地面を叩く音、スリッパの踵を引きずる音、水が流れる音、鼻から息を吸った時の音。

 人が生きていく上で発生する音。

 自然界に流れる音。

 家の中で人間がぼーっとしていても、音は常に流れている。

 だって、その手にもつ小型端末で動画サイトの動画を垂れ流しにしているのだから。

 外を歩けば、ワイヤレスイヤホンをした人々がスマホに目を落として歩いている。彼らの耳に聞こえているの音楽か、動画の音声か。

 このように人の世界は音で溢れている。

 音で溢れているからこそ、些細な音があったとしても誰も気にしない。

 ビルが一つ、崩壊した。


「僕はなにもしてませんよ。普通に爆弾を仕掛け、爆発させただけ。なのに誰も気づかなかったんですよ。今、世界は音で溢れてますからねー。爆弾の音をかき消してくれるには、十分でしたよ」

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