#132 名探偵の迷宮入り事件

 コンコンコン、と控えめなノック。

 閉じていた瞼をあげて、私は「どうぞ」と言った。

 扉が開かれ、入室してきたのは助手くんであった。助手くんは椅子に深く背を預けている私を見ると「しまった」と言うような表情をして頭を下げてくる。


「すみません! お休み中でしたかっ」

「構わないよ。推理をまとめていただけさ。それに、ちょうどまとめ終わった」


 私は椅子から立ち上がり、上着を羽織り、ハットを被る。

 いつもの仕事のスタイルへと切り替えながら、


「いつも通り、警部たちに声をかけてくれるかな。犯人がわかった、とね」


 私がそう言うと助手くんは「はい!」と元気よく返事をして部屋を出ていく。

 相変わらず返事が元気なことだ。


「さて、それでは行こうか」


 今回の事件も私にかかれば、簡単なものだった。迷宮入りなどしない。いささか過激な殺人事件ではあったが、多くの証拠を犯人は現場に残しすぎた。難事件とはとても言い難い。それでも警部の頼みとあらば推理するのが私の仕事。

 事件現場に向かうために、ドアノブに手をかけ、


「?」


 私の力ではなく外部の力によって扉が開いた。

 助手くんだろうか? と疑問に思った瞬間、勢いよく扉が開き、


「──!? 君は!?」


 その男を私は知っている。なぜなら今回の事件現場にいた人物であり犯人なのだから。

 だが、今重要なのは彼がここにいると言うこと。

 そして、




 彼の持つ銀色の刃物が私の腹部に刺さったと言うこと。




「…………こ、れ、は」


 男はナイフを抜くと、再び突き刺してくる。

 通常であれば対処できただろう。しかしひと刺しされた後は体から急激に力が抜け、対処ができなくなる。

 激痛と遠のいていく意識の中、


「これで、事件は迷宮入りだな」


 男の勝ち誇った声が聞こえてきた。

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