#129 男の子の戦い

 カンッ! と乾いた音が鳴る。獲物同士がぶつかった音だ。

 すぐに手首を返し、二撃目を振り下ろすも、防がれる。鍔迫り合いからバックステップで距離を取る。

 手にした獲物を構え直し、呼吸を整える。

 お互いに笑みをこぼすと、圭介けいすけが駆け出す。手にある長物を振り下ろし、九条くじょうはそれを見切って躱す。獲物のリーチは圭介の方が長い。両腕を巧みに使い、まるで槍のように振るう。

 対して、九条は片手で己の獲物を巧みに扱う。リーチはない。だから、繰り出される圭介の攻撃を巧みに躱すしかない。


「やるな、九条」

「圭介こそ。相変わらずうまいな」


 両者の間に殺伐とした雰囲気はない。

 ただ自由に、純粋に、この攻防を楽しんでいるようだ。

 そうだ。本来やらなくてはいけないことより、こうしている方が何倍も楽しい。

 タイムリミットまでまだ時間はある。

 だから、両者は今一度獲物を構え直し、対峙する。

 二人は睨み合う。ジリジリと、緊張の糸が張り詰めていき、そこへ──、


「ちょっと男子二人! ちゃんと掃除しなさい!!」


 ──クラスの委員長の声が響いた。

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