#127 指先ひとつ
男は語る。
「だって、みんなスマホに目を向けてるんですもん。視線がその掌にある小さな画面。あ、でも今の最新機種じゃ『小さな』は的確ではないか。いいや、変わんないよ。結局は『小さな画面』なんだから」
画面に映し出される男は、何も悪いことをしていないと言った様子で言葉を続ける。
「電車の中見てくださいよ。通勤、通学、果ては遊びに行く時。みんなソレに夢中だ。面白い漫画を見てるのか、動画を見ているのか。SNSを見ているのか、ま、そこは人それぞれですけどね。だから俺はやったんですよ。できちゃったんですよ」
男の年齢は20代後半。もしかしたら30代前半かもしれない。
「簡単でしたよ? 今じゃ情報発信はどこででもできる。動画サイトで動画を投稿するのもよし、生配信するのもよし、SNSに投稿するのもよし。手はいくらでもあるんです。だってみんな目にするから」
男は得意げに語ることはせず、ただ事実を述べている。
「俺はあくまで最初の一歩をやっただけです。広げて行ったのはソレを見ていた不特定多数の人間ですよ。もしこれを禁止したいなら、スマホを無くさなきゃダメですよ」
男はSNSや動画投稿サイトにとある動画を投稿し続けた。動画はなんの変哲もないものだ。俗に言う「Vlog」と呼ばれるもの。ただそれを投稿していた。
だが、男は動画にある細工を施していた。その細工が人類滅亡の危機を引き起こした。
「『サブリミナル効果』。漫画とかでしか見たことなかったけど、案外簡単にできるんですね」
男は指先一つで世界を崩壊させた。
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