第2話

100DP。これは初期資金としてはあまりに心もとない。

 召喚リストを確認すると、ゴブリン1体につき30DP、スライム1体につき10DPが必要だ。単純にゴブリンを3体呼んでも、装備も知能もない彼らは、村の子供にさえ返り討ちに合うだろう。

(エンジニアの鉄則だ。個々のユニットの性能に頼るな。システムで勝て)

 私はまず、自身の設置場所である「コアの間」へと続く通路に干渉した。

『テラフォーミング』発動。

 魔力が結晶から伝わり、周囲の岩盤を泥のように溶かしていく。10DPを消費し、幅2メートル、長さ10メートルの直線だった通路を、あえて「クランク状の狭い迷路」へと作り変えた。

 次に、生物学者としての視点を加える。

 侵入者が曲がり角を曲がる際、一瞬だけ生じる「死角」。そこに、私は20DPを投じて『粘着性トラップ』を配置した。

 さらに30DPを使い、『劣化型アシッド・スライム』を3体召喚。彼らには『マクロ構成』で以下の行動論理(スクリプト)を書き込む。

『IF:侵入者がトラップに足を取られた。THEN:天井から落下し、気道を優先的に塞げ』

(そして、最後の一工夫だ。料理人なら、客を呼ぶには匂いが重要だと知っている)

 残りの40DP。私はこれを「餌」に充てた。

 本来、DPは魔物の召喚に使うものだが、私は『捕食調理』の逆プロセスを実行した。

 DPを「魔力を帯びた芳醇な果実の香り」へと変換し、空気の流れを操作して、廃鉱山の入り口へと漂わせる。

「さあ、おいで。この香りは、飢えた野生動物にも、功名心に逸る若者にも、最高のスパイスになるはずだ」

 結晶が妖しく明滅する。

 暗闇の中で、最初の「顧客」の足音が聞こえてきた。

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