ダンジョンコアに転生してしまった男:佐藤
@KENTO0725
第1話
意識の覚醒は、システムのリブートに似ていた。
暗闇の中に、ノイズ混じりの文字列が走る。前世――佐藤という名の男が、過労死寸前の脳で最後に見た「サーバーラックの警告灯」の残像が、今の視界に重なっていた。
(……ここは、どこだ。ビルドは完了したのか?)
思考を試みるが、言葉が音にならない。喉がない。肺がない。心臓の鼓動の代わりに、規則的な「魔力の脈動」が自身の中心部から響いている。
『個体名:佐藤。魂の定着を確認。……エラー。肉体消失を確認。代替ハードウェア:ダンジョンコア(ランクG)への統合を開始します』
脳内に直接響く無機質なアナウンス。と同時に、視界が「開いた」。
それは網膜による視覚ではない。全方位360度、自身の周囲数メートルを等距離で把握する「空間認識能力」だ。
私は、自分が岩肌に埋まった、直径30センチほどの深紅の結晶体であることを理解した。
(ダンジョンコア……。ファンタジー小説で使い古された概念だが、まさか自分がなるとは。それも、このステータスはなんだ)
【ダンジョンステータス】
ランク:G(最弱)
保有DP(ダンジョンポイント):100
マスター権限保有スキル:
1.『マクロ構成』:ダンジョン運営の自動化および論理構築。
2.『テラフォーミング』:魔力を消費し、地質・構造を瞬時に改変する。
3.『合成進化』:魔物や物質の遺伝情報を解析し、新たな種を創造する。
4.『捕食調理』:有機物・無機物を分解し、最高効率でDPと栄養素へ変換する。
エンジニアとしての本能が、この状況を「プロジェクト」として定義した。
現在の環境は、エリュシオン大陸北部。放棄された廃鉱山の最深部だ。周囲には微弱な魔力しか漂っておらず、このままではコアとしての機能も維持できず、いずれ風化して消滅するだろう。
「まずは、リソースの確保だ。100DP……。これをどう投資するかで、私の生存確率は決まる」
私は、前世で培った「効率化」の知識を総動員し始めた。
建築家として、入り口からの動線を設計する。
生物学者として、侵入者の心理と生理的弱点を分析する。
料理人として、いかにして「獲物」を最高の状態で処理するかを構想する。
私の物語は、この暗く冷たい廃鉱山から、世界を呑み込む迷宮へと進化を始める。
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