第6話 想い決行?⑥

 2人の間に少しの沈黙が生まれ普通なら聞こえない外の風の音がはっきりとわかった。

 12月前半、例年に比べて寒く感じる為すでに和樹の部屋には正方形のコタツがある。小ぶりなタイプで和樹と彩が足を入れるとほかに入れる余地はない。

 コタツの中で足が軽く触れる。いつもならお互いに足の位置を変えて終いなのだが和樹は反射的に


『あっごめん』


 なぜか謝ってしまった。

 彩が先輩と付き合っていなかった事実を知りドッと疲れた気がした。大きく深呼吸をし気持ちを落ち着かせる。和樹は内心ホッとしている。

 そんな和樹を見ていた彩は少し意地悪をしてやろうとおもった。

 触れる程度ではなく強めに和樹の足をかかとで蹴ってみた。ドスっとにぶい音がする。


『痛ってぇ~!』


 打ちどころが良かったのか和樹はコタツから飛び出し自分の足をみた。

 なぜ蹴られたか分からない和樹はとっさに彩をみると機嫌が悪いは分かったが蹴らる意味がわからない。


『ほんと和樹君はにぶい!ぜんぜんわかってない!』


 彩はいつもより少し語気が強い。

 和樹はとっさに


『ごめん』


 さっきから謝ってばかりだなと和樹は思った。と同時に乙女心は難しく複雑なのかと。

 彩はほっぺたを膨らましている。怒っているとうよりは、ふてくされている。

 和樹はそんな彩に見惚れてしまう。心底彩に惚れているのだ。

 自分の気持ちを伝えたいが今この状況で言ってもいいものか、場違いではないか、よからぬ考えが次々に思い浮かび言葉に詰まる。

 思考回路が完全にストップしパンク状態の和樹の瞳にはうっすらと涙がにじんだ。


 ふてくされていた彩であったが和樹の涙目に驚いた。強く蹴ったものの涙が出るほど力を込めたつもりはない。

 咄嗟にコタツから出た彩は和樹の背中に回り服の裾を軽く引っ張り


『そんなに痛かった?ごめんなさい』


 和樹は彩の言葉で自分が涙目になっていることに気づいた。

 人間テンパると無意識に涙もでるのかと感心した。


『いや、これは違くて。痛かったけどそうじゃなくて』


 和樹は振り向かず涙をぬぐった。泣き顔を彩に見られたくない一心で。


『じゃあ何の涙?』


 和樹は質問の答えを考える前に声に出していた。


『彩が遠くにいくような気がして…自分勝手な理由だけど…』


 感情が言葉になる。


『僕は彩が好きだ』


























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