第3話 想い決行?③
和樹は緊張のあまりいつも歩くこの横断歩道がとてつもなく長く感じていた。
まさか彩と二人で歩けるなんて。
思考がめまぐるしく変化し全く完結しない。
そうこうしていると彩が
『あ~可笑し。菜刀君おもしろいね。』
彩は涙まで流し笑っていた。
『ほんと見られているなて思ってなかったから超はずかったんだからね。誰にも言わないでよ』
まだ笑いが収まらない様子の彩は涙をぬぐっている。
彩のどんな仕草も和樹には刺激が強く心が奪われる。
『ごめん。ぜっっったい誰にも言わないです』
『誰かに言ったら菜刀君のこと嫌いになりますから』
和樹にとってどんなにするどい刃物より鋭い言葉のナイフ〝嫌い〟が胸に突き刺さる。
『はい。約束します』
『よろしくお願いいたします』
横断歩道を渡り切ったところで彩はペコリと頭を下げる。
つられて和樹もぎこちない会釈をする。
顔を上げ彩をみるとまたクスクスと笑って見えた。
『菜刀君はまっすぐ?』
『え?あ、うん。このまま真っすぐ』
『そっか。私今日こっちに用事あるから』
彩は右を差し
『じゃあね。また明日』
と、手を軽くふり一人で幹線道路沿いを歩いて行った。
和樹も
『また明日』
彩の後ろ姿に見とれながら大きく深呼吸をしうなだれた。
『あ~緊張した』
思わず声に出たと同時にこのまま立ち呆けていたらもし彩が振り返った時、何してんだアイツはとキモイ奴と思われてしまう。
それだけは回避せねば。
せっかくおもしろキャラとなったのだからなんとか維持しないと。
そうそうにその場から歩き出し自宅を目指した。
今日は良い1日だったと気分爽快になり上機嫌になっていた。
勝手に笑みがこぼれ、すれ違う小学生たちが気持ち悪そうに和樹から距離とっている。
和樹はまったく子供たちが視界に入らず終始にやけていた。
あの待ち時間のながい横断歩道のおかげで彩と会話ができた。
さらに一緒に並んで歩いた。
しょうもないことだが和樹にとって人生で一番のイベントになった。
『もしかしてあれは、はたから見たらデートですやん!』
ブツブツとひたすら妄想を繰り広げているうちに自宅マンションに着いた。
集合ポストを開け郵便物をとり振り返ると、ちょうどマンション入り口に
母
『ご苦労様です』
不機嫌でもないが陽気でもない口調で和樹は声をかけた。
しかし、和樹の顔は他者から見れば不気味にニヤけているだ。
優子はおもわず
『あんた何そんなとこでニヤついてるの?気持ち悪し変な噂たつからやめなさい』
母であるはずの優子の表情は引きつっていた。
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