第2話 想い決行?②

『ほな和樹また明日~』


 和樹が座る席の二つ前の〝近郷こんごう しょう〟だ。

 とても気さくで人見知りしないタイプの男子だ。コミュニケーション能力が半端ない。まだ知り合って間がないが、和樹にとって数少ない友人の一人だ。


『おうまたな~』


 和樹は翔に向かって軽く手を挙げると窓側最後尾の席の和樹からは、ほぼ教室全体が見渡せる。

 帰宅する者やクラブに励む者、グループになってお喋りを楽しむ者たち。

 一通り見渡すと右隣の席の彩が数人のクラスメイトと教室を出ようとしているところだった。

 教室の端から見える彩は普段と変わらない様子でよく笑っていた。

 その笑顔を見て和樹は昼間のことを思い出していた。

 彩の深い深いため息も気になるところだが、彼女のあの可憐な仕草が目に焼き付いている。

 和樹は内緒と言われてから彩の方を見たいのに見れずにいた。

 あまりの衝撃だったので思い出すたび顔がにやけてしまうのだ。

 完全にノックアウトされた和樹は自分自身が流石にこれでは気持ち悪い変態野郎ではないかと自覚した。

 好かれたいという想いより嫌われたくない気持ちが強い和樹は明日から気をつけねばと心底思った。




 クラブに入っていない和樹はいつものように独り下校した。

 家まで徒歩20分ほどの距離だ。途中大きな幹線道路があり渡らなければならない。この道路が曲者で信号につかまるとかなりの待ち時間が発生する。

 和樹はなぜかこの信号待ちにかなりの確率で当たってしまう。

 特に早く帰る必要もない和樹ではあるがこの時間だけは無性に腹が立つのだ。

今日も案の定赤信号に捕まってしまった。


信号機と睨めっこをしていると後ろから


『菜刀君!』


声をかけられた。まさかの女子から。

返事をしないまま反射的に振り返るとそこには先に教室を出たはずの彩が立っていた。

和樹は突然のことに唖然とし声がでない。挙動不審に口をパクパクしていると彩の方から


『菜刀君も家こっちなんだ。ここの信号ながいよね~』


と、和樹の横に並び信号を見ていた。

和樹は内心ばくばくだが気づかれないよう平静を保ちながら


『うん。長いね。』と相槌を打った。


横に立つ彩をちらりと見ると彩も和樹を見ていた。

目が合いドキリとする半面、意外と身長差があるなと和樹は思った。

彩は和樹を見上げていた。そして


『なんで私がため息をついてたとこ見てたの?』


直球の質問に和樹は焦ってしまった。

おろおろしていると


『青だよ』


彩は歩き出していた。


小走りで追っかけ彩の横に並び


『いや、見てたわけじゃなくたまたま視界にはいって。ほんと偶然』


嫌われたくない一心で焦って言い訳をする。

和樹には見てたなんて正直に言える度胸も冗談を言い合える仲でもないので真顔で答えたが声は焦りを隠せない。


少し間が空き彩がクスクスと笑い出した。


『菜刀君なんでそんなに焦ってるの?私べつに怒ってないけど』


ツボにはまったのか彩は続けてお腹を抱えて笑い出した。


和樹は何が面白かったのかわからないまま引きつるように小さく笑った。
































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































 





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