第6話 答え合わせ

「あの、先生」


「はい」


「……ずっと、言わなくちゃいけないと思っていて」


「はい」


「告白したくせに、振られた後、また元彼と付き合ってしまった……本当に——」


「僕、その頃。2人がまた付き合い始めた頃、一度だけ、大鷹さんと会いましたよね」


「はい、確か、修学旅行の帰り。新幹線の中でした」


 デッキで友達を待っていた時に、一瞬顔を合わせた。


「僕、あの時」


「何か言えばよかった——」


「え?」


「正直、中学生の頃の私は、今より大丈夫そうな感じだったけど、今よりも、ずっと、病んでいました。……元彼に、別れたら友達に戻れるか聞いてみたことがあったんです。でも、それは無理だと言われました。そりゃそうですよね。あまり、聞いたことがないですし、仕方がない。だから、何度も別れて付き合ってを繰り返していました。あなたに告白して、振られて、そっかーって思って、そうだよねって思って。考え方がバグって、振られたついでに、元彼にも振られてこようって思って、それで告白した」


「……」


 先生は、何も言わずに聞いていた。


「そしたら、考えさせてって言われて。正直、びっくりした。だって、バグってたから、振られるって思ってた。現実ってゲームじゃないから、リアクションってその時によって違うから、あたりまえなのに。……数日待って、もう一度返事を聞いたら……付き合うことになって。その時、今年いっぱい付き合って、区切りをつけようって思ったんです。自分の中だけで期限を決めて」


 話し始めたら、止まらなくなってしまった。


「……一方的に話してしまってごめんなさい。私は、あなたに振られて、元彼と付き合って、やっと冷静になれた。元彼と別れた後、頭のバグを治すために、高校の3年間、誰かを好きになってもアクションしないと決めて、誰とも付き合いませんでした。こんなことじゃ、罪滅ぼし……というか、迷惑をかけたことがなくなるわけじゃないけど」


「うーん。なんというか、本音が聞けてよかった」


 改めて、彼を前にして話していると思うと、緊張した。


「先生、私、高校のとき、ずっと申し訳ないなって思っていたけど、特にあなたには思っていた。……高校の時、同じクラスの人が同中で、先生の話をしていたのを聞いて、申し訳ない気持ちと、やっぱり好きなんだなって気持ちがあって、ずっとずっと……ずっと謝りたかった」


 泣いてしまった。情けない。こんな時こそ泣かずに、話し切りたかったのに。


「うん……あのさ、大鷹さん」


「はい?」


 涙を拭きながら、顔を上げると、先生は立ち上がっていた。


「ちょっと、行きたいところがあるんだけど」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る