第4話 仮説の屈折
「仮説を1つ」
「え?」
「昨日の話の仮説を考えていて……」
私は、昨日家に帰ってから思いついてしまった仮説を先生に聞いてもらいたいと思った。話さずにはいられなかった。だって、こんなの耐えられない。……本当は、耐えなくてはいけないんだろう。私の過去の話、なのだから。
「大鷹さん。昨日、僕が途中で帰ろうと言ってしまったから、また、考えすぎてしまったんですね」
「……いえ」
仮説を思いついただけで、それが真実なのかどうかは考えなかった。というより、考えられなかった。
「あの、思いついてしまったので、聞いて欲しいんです。1人でこの先を考えるのは、少し……」
「わかりました。聞きます」
また、真剣に聞いてくれるらしい。少しだけ、安心できた。
「昨日の、2人が友達になったのが、元彼が私と付き合う前だったら……の先の話です」
「はい」
「元彼は、実は、私が信頼できる人かどうか試したかった……という仮説を思いつきました」
「ん?」
「クラスメイトは、元彼に言われて、私と仲良くした。元彼は、そのクラスメイトと浮気をしないのかどうか確かめていたのではないかと」
「じゅ、重症です」
「え?」
「だって、いくらなんでも友達にそんなこと頼みます?」
「……距離が」
「距離?」
「最初から距離が近かったんです。私も人のこと言えないけど、そのクラスメイトは私よりも距離が近い人で、最初に話した時は、あれ?知り合いだっけって思いましたもん」
「なるほど……」
先生は、少し呆れていた。
「だっ、だから、なんか変だなって思うでしょ?自分より距離が近い人なんていないと思ってたから、何かありそうだなって」
「あの……では、僕も話します」
「え?」
「僕の恋愛話」
なんだか話を逸らされた気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます