第35話 愛花を呼ぶ2つの理由

今日は土曜日。なんといっても愛花の勘違いを解くため、俺のバラエティ番組の収録現場に行く。だが愛花にはまだ伝えていない。

今の時間は9時。何か忘れ物をしたりいしないように、休日の仕事では1時間、学校終わりの仕事は30分間には持ち物の確認をするようにしている。


ちなみに、LINEで約束をした次の日は、クラスの布目君たちと昼ごはんを食べないかと誘われていたので、そこで質問攻めにあいながらも楽しく食べていると、その時も愛花が悲しい顔をしたのでなんかすごく申し訳ない気持ちになった。


朝の10時に愛花が俺の家に来ることになっており、15分後くらいに浜田さんが来ることになっている。


「今のうちにできるだけ準備をしておかなきゃな」


マスクなどの変装用具など、準備するものを準備し終わると、玄関のチャイムが鳴った。


「やぁ、いらっしゃい愛花」

「おはよう、明君」

「とは言いつつもあと15分くらいで移動するんだけどね」

「移動?ってことは車か何かに乗っていくの?」

「まぁそうだね、でもタクシーではないよ」

「なにそれ余計に気になるんだけど…」


愛花にはとりあえず適当にくつろいでもらうことにした。

あと13分もないしね。

すると、俺のケータイが震えだす。

おそらく電話が来たのだろう、その相手を見た俺はやっぱりと思いながらスマホのところに行く。そして、


「ごめん愛花!ちょっと電話が来たから出てくるね!」

「あ、うん!」


「もしもし?」

『あーもしもし?明君?あのー』

「言わなくてもいいですよ、浜田さん。多分あと2~3分あればついちゃうけどいい?的なことですよね?」

『え、すごいなんでわかるの?』

「そりゃあどのくらい一緒にいると思ってるんですか、流石にそれくらいはわかりますって」

『まぁつまりはそういうことであと2~3分で着くけどいい?』

「あ、はい大丈夫です」

『わかったわ、それじゃあまたあとでね』

「はい」


今回の収録現場には浜田さんに連れて行ってもらうこととなっている。

何故浜田さんに連れて行ってもらうのかというと、1つは単純に、


・俺の正体がバレて愛花に迷惑がかかったら良くないため。

今回は愛花に行く場所を伝えておらず、許可もとっていない(多分愛花なら即OKするだろうけど俺が無理な)ためである。


だがもう1つは1週間前まで遡る。

結論から言うと、文化祭のときに偶々俺たちの演劇を見に来た浜田さんが愛花の演技に一目惚れしたらしく、愛花と会って話をしてみたいと思ったからだそう。

ちなみに今日に関しては愛花をスカウトしたいとかではなく、単純にあってみたいだけらしい。まぁ愛花自身がそうしたいのであれば勿論勧めるとは言ってたけどね。


ちなみにその時の文化祭の会話が、


「明君、案外やっぱり大丈夫だったわね」

「自分でもビックリですよ」

「それにしても流石ね、あなたが1人で引っ張るのではなく、クラスの出演者全員で作り上げる感じになっていて」

「そりゃあ自分どんだけ演劇系やってると思ってんすか」

「それそうと…」

「あ、無視したというか話逸らした」

「あの王女役の子誰!?私思わず演技に一目惚れしちゃったんだけど!」

「あーあれが俺の彼女ですね」

「え!?あの子が!?じゃあぜひあなたの収録の時にでも呼んで!私1回話してみたいの!」

「ま、まぁいいですけど...今度誘っときます」


とまぁこんな感じである。結果今日になったわけだが、浜田さんには愛花がどこに行くのか知らないことを伝えてあるので問題なく上手くやってくれるだろう。

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