9

「……さて、これから俺たちがやらねぇといけないことだが、主には二つだ」


 翌日、ロックはダインとフィーネをリビングに集め、神妙な面持ちで右手にピースサインを作っていた。三人が囲った朝食はダインが準備したもので、白米となめこの味噌汁、卵焼きに白菜の漬け物。純和風だが淡白な献立となったのはフィーネを慮ってのことだ。


「一つはフィーネの保護。もう一つは、塔都理想教会がフィーネを狙う目的の調査」

「なるほど……。目的さえ分かれば、行動を読むことも難しくないですもんね」


 これまた神妙な面持ちで同調するのはフィーネ。


「あの人たちがなにを目論んでいるかわかりませんが、とてつもなく嫌な予感がすることだけは確かですしねっ!! 私もできることはなんでもやります!!」


 鼻息を荒くするフィーネを冷ややかに見つめるダインはやれやれと首を振った。


「立場というものを弁えてください。あなたが先陣を切ってどうするんですか。自衛手段も持たない以上、勝手をされては困ります」

「ダインの言うとおりだ。ただでさえ白装束にまで狙われてんだ、命がいくらあっても足りやしねぇ」

「むぅ……」

「昨日あれだけひでぇ経験したなら分かると思うが、神能もなけりゃ武器を扱えないような人間にとって、ここは生き地獄そのものだ。姿を隠していない限り、一歩表に出れば降りかかってくるのは終わりのない逃走劇。俺らの命令に従えないなら遅かれ早かれ死ぬ。いや……、もしかすれば死ぬより恐ろしい目に遭うかもしれない。それでもいいのか?」

「死ぬのは……嫌、です」


 しょぼくれて俯くフィーナに、ダインは情け容赦なく追撃をかける。


「フィーネさん。いまのあなたに決定権はありません。せいぜい大人しく庇護されていてください。勝手な行動をされると僕らも守れなくなります」

「で、でも……私、このままじっとなんて……」

「駄目です。じっとしていてください。それができないなら、義兄さんの言うとおりいざというときあっさり死にますよ」

「死っ……」


 フィーネが青ざめながらぼそりとこぼす。


「それよりもどうしましょう。フィーネさんの保護はともかく、問題なのは教会に探りを入れる手段ですか。誰かを囮にするようなことはできないでしょうし……」


 そう言いながら横目でフィーネを見やるダイン。標的を餌にして獲物を釣る、という方法もないわけではないが、今回ばかりはロックも肯定できなかった。赤の他人だろうが妹と瓜二つのフィーネを囮にするのは気が引けるし、罪悪感に苛まれるに違いない。


「聞き込みか、潜入か、だな」

「前者は難航するでしょうね。僕も昨日、しばいた白装束に吐かせようとしましたが譫言を吐くばかりで尋問は無駄でした。フィーネさんを欲している本当の目的を知っているのは一握りの上層部だけだと思ったほうがいい」


「……となると、潜入か」

 溜息混じりにロックが呟く。


「……どうしましょうね」

 ダインもまた、深い溜息をついて。


「……え、お二人とも、どうしたんですか」

「…………」

「…………まぁ、多少の用事があっても踏み込みたくない場所なんだよ」


 渋谷九龍城。

 塔都理想教会の本拠地でありながら、その全貌は教会の一部の人間が知るのみであり、信徒でない者が全貌を明らかにすることは不可能とも言われる迷宮だ。商業ビル群の上に無秩序に積み上がる住宅群と、ビル群の隙間を縫うように立ち並ぶ有象無象の雑居スペースで構成される巨大な建造物は、奇跡的なバランスで維持された、文字通り龍の腹の中のように入り組んでいる。


 ロックとダインはこれまでにも幾度となく深部を解明しようと立ち入った。だが、生半可な覚悟で後先考えずに突入し、飢餓で双方命を落としたことすらある。


 大樹が屹立する中央へ繋がるルートは無尽蔵。そして大樹の半径1キロ周辺は教会本部の私有地であり、部外者が立ち入れば無限に湧き出てくる白装束や、疫病の保菌者と思しき狂犬やら蝙蝠やらが至る死角から見境なく襲ってくる。


 まさに現存する地獄の最奥そのもの。


「中央までのルートは頭に入っていますが、探検なんて二度と御免だ」

「……だな」

「けれどこの事態を解決するためにはどちらかがあそこへ行かなければならない。そういうことでしょう?」

「……まぁ、そうだな」


 はぁ、とダインは嘆息して。


「なら、その役回りは僕が引き受けます」

「……なんだ、随分とやる気じゃねぇの。一体どういう心境の変わりようだ?」

「単に天秤に架けただけですよ。フィーネさんの子守と地獄を徘徊して戻ってくるのと、どっちか自分に性にあっているかをね」

「……むむぅ。その場所のことはよく知りませんけど、なんか私、いまものすごい邪険に扱われている気がします!! それに子どもじゃありません!! 立派な成人ですっ!!」

「成人かどうか分からないんだろ? 記憶喪失なんだから」

「むむむ……そ、それはそうですけどっ、なんとなく20歳くらいな気がしますよ、私っ!!」

「なんだそりゃ……」

「誰も証明しようがないなら、言ったもの勝ちですっ!! 私は大人ですっ!!」

「あーはいはい、そいつはよかった。大人ってことにしといてやるよ」

「そうです!! お酒も飲めますっ!!」

「おうおう、それは喜ばしいことで」


 きゃんきゃんと叫くフィーネを適当にあしらうロックの隣で、ダインは終始しかめっ面で頬杖をついている。


「……騒がしいことこの上ないですね。やはり僕にあなたの子守はできそうにない」

「ダインさん、本当に失礼ですね……」

「僕は元々そんなに人付き合いが得意なほうではないんです。気心を赦せる人間なんて、この世界に五人といません」

「それはなんというか……、すいません。残念でさみしい人なんですね……」

「あなたも大概ですね……」


 ダインはフィーネを白い目を見た。フィーネもまた憐憫の眼差しをダインへ向けている。どっちもどっち、お互い様だろうよ、とロックは呆れて物も言えない。


 しばらく無言が続いたが、口火を切ったのはダインだ。


「……そういうわけですから義兄さん、フィーネさんの面倒は任せましたよ」


 席を立ち、ダインは支度に取りかかる。


「何度となく潜ってますから、中央部まではそれほど時間もかかりません。じっくり詮索する時間も含めて、五日もあれば充分でしょう。それ以上の長居はしません。長期滞留は精神に異常を来しますからね」

「そ、そんな場所なんですね……」

「九龍城を根城にするような奴らなんざ、大半は真っ当な考えを持っちゃいません。できることなら同じ空気だって吸いたくない。けれど、こればっかりはしょうがないことですからね」

「……分かった。潜入はダインに任せる。レッカのところには寄っていくだろ?」

「ええ。マガジンを仕入れておかないといけませんから」

「そこまでは俺も同行する。レッカなら教会に入信した野郎共にアテがあるはずだ。多少は情報を仕入れないとな」

「あれ……もしかして、私はお留守番……ですか?」

「……そうなるな」

「い、嫌です!!」


 フィーネが跳ね上がり、吠えた。拳をぐっと握りしめ、抗議のまなざしを二人に向ける。


「狙われている子を一人ぼっちにするなと言ったのはお二人ですよねっ!? 私を置いてけぼりにするなんてずるいっ!!」

「ずるいもなにも外に出たら一発でアウトになるって言ったろうが。身を隠す手段がないわけでもないが、安全が保証できるわけでもない。だからここにいるのが最も安全――」

「外出する手段はあるということですねっ!?」


 ロックが溢したわずかな希望に、目を爛々と輝かせたフィーネが食いつく。


「何度も言わせんな。そうするために必要なもんがない。昨日も確認したろうが」

「それは、指輪とか、ですよね……」

「そうだ」


 金属製の指輪やネックレス、鉄鋼でできたブレスレット。そういう類いの装飾品を身につけていれば、任意の対象を周囲の目から隠し通す。ロックに宿る雷神の神能を活用したトリックの一つだ。


 だが、フィーネはなにも身につけていない。ロックも装飾品といえば首元に垂らした妹の形見のネックレス一つだけで、いざというとき必要となるため手放せない。


 結果、フィーネの視線は自然にダインへ向けられ、その首元で止まった。


「ダインさん、首元のそれは――」

「駄目です。これは形見ですから」

「そう、ですか」

「婚約をしていた彼女からもらったネックレスです。指輪は、言わなくてもわかりますよね?」

「そういうことなら、譲ってもらうわけにはいかないですね……。でも、びっくりです。ダインさん、そんな間柄の人がいらっしゃったんですね」

「ええ。もう随分と昔の話ですが」

「……これは、すいません」

「いいですよ。もう昔の話と割り切ることができますから。気にしないでください」


 平静を装うダイン。突き放すような言葉が普段よりも強めなのは、気のせいではないのだろうな、とロックは苦々しい顔を浮かべた。


「とにかくそういうこった。いいじゃないか、男二人を侍らせて、理想のヒモ生活だ」

「軟禁っていうんじゃないのかな、これ……」

「文句あるなら白装束に身柄を渡しても良いんですよ? 僕らは困りませんし、お金だって手に入りますからね。厄介ごとも減って一石二鳥です」

「ひどいですっ!! 本人がいる前でそんなことを言うなんてっ!! それでよく将来を誓い合った人を見つけられましたねっ!?」

「あっ、馬鹿そいつは御法度――」

「なんだお前、僕のイヴを愚弄するのかっ!?」


 ロックの静止は間に合わない。

 これまで文字通りの平静を装っていたダインが、血走った目でフィーネを睨む。


「ひっ――」

「やっぱりやめましょう、こんな女を保護するのは。いますぐ白装束たちに突き出してやればいいんですよ。どうなろうと知ったことじゃない!!」

「わーーーっ!! それだけは勘弁してってばーーーっ!! 鬼っ!! 悪魔っ!! 人でなしっ!!」

「ええい、うるさいなっ!! ああくそ、服の袖を引っ張るなっ!! 叩くんじゃないっ!!」

「だっから私を突き出さないって約束しなさいよっ!! まさか、二人して出掛けて、その間に奴らと共謀して私のことを売り渡すつもりじゃないでしょうね!?」

「なるほどそれはいい考えだ。是非とも採用して――」

「ああもうっ!! やっぱり私を保護した目的はお金目当てだったんですかっ!! もう嫌だ、なにも信じられない……っ!! ならせめてあなただけでもこの私が息の根を――あ痛っ!?」


 物騒な言葉の応酬にいよいよ目も当てられなくなったロックは、取っ組み合いをする二人の間に強引に割って入ると、脳天にチョップを見舞った。


「――いっづ……な、なんで僕までっ!?」

「落ち着け二人とも。まずはダイン。言い過ぎだ。ゲスト相手にムキになってどうする」

「っ……、それもこれも元はと言えばあなたがこの女を引き連れてきたからで――」

「そいつは昨日、散々謝ったろうが。俺に矛先を向けるならまだしも、フィーネを傷つけるな。ただでさえ教会の連中に追われてる身だ。怖がらせてなんの意味がある。鬱憤が溜まってるなら吐き出す相手は俺にしろ。いくらでもサンドバッグになってやるから」

「くっ……」

「それとフィーネもだ」

「うっ……」

「軟禁するつもりはねぇ。ただ、事実としてフィーネに危害が及ばないようにしないとならねぇのは理解してくれ。だからここにとどまっていてくれってお願いしたんだ。扱いに不満があるなら出て行ってくれて構わない。白装束に差し出して懸賞金をもらったところで所詮はすぐに溶ける金だ。そんなもんにも興味はない」

「……っ、でも、私だって、このままじっと待ち続けるだけなんて、嫌です。自分が追われている理由も知らない、記憶だってなにもない。不安で落ち着かないんです……」


 しゅんとした様子でフィーネが訥々と語り出す。


「街を見たり、その砦とやらの側までいけば、もしかしたらなにか思い出すこともあるかもしれない……そう、思って…………っ」


 弱々しい声は震え、いつの間にか、その目には涙が滲んでいた。

 ダインはそんなフィーネの嘆きに、顔を逸らし、ばつが悪そうにぼりぼりと頬を掻く。


「……ああ、もうっ、僕が悪かったですよ。外に出られればいいんでしょう!? なら、指輪やネックレスの一つくらい僕がすぐに調達してきますよ」


 ダインは財布を握り、逃げ出すように外へ出て行く。

 玄関のドアが締まる音を確認して、フィーネは泣き顔を覆っていた両手で目元を拭う。

 そして、悪戯成功とばかりに、ぺろりと舌を覗かせた。


「…………なぁんて、泣き顔の一つでも見せればちょろいもんですね」

「なっ……、お前…………」

「フィアンセがいた大抵の男は女の泣き落としに弱いもんなんですよ。単純ですね」


 一体どこでそんな演技を仕入れたのだと追求したくなってくる。ついでに言えば外見が実妹に似ているせいで、なんともやるせない気持ちが込み上げてくる。せめてダインの前ではフィーネのこの顔のことは黙っていようとロックは心に決めた。

 ロックにしたって、目の前にいるのがイヴだったら、そんな妹に育てた覚えはないっ!!――などと叫んでいたに違いなく。


 改めて、フィーネはイヴと似て非なる別人なのだと思い知らされた。


「泣き落としは女性の必殺技の一つですから。ここぞというときにしか使いません。大事な言葉を何度も繰り返すと軽くなっちゃうのと同じです」

「……大事な言葉だからこそ、何遍も口にするもんだろ。泣き落としとは別物だ」

「それは見解の相違というやつですね。でも、愛情だっていつかは耐性がついて薄れていくものなんですよ」


 さっきまでのしょぼくれた態度はどこへやら。

 いっそ鼻歌でも歌い出しそうな勢いでフィーネが部屋を物色しはじめた。


「なにやってんだ。人の部屋を勝手に漁るな」

「お二人の弱みを握れそうなものがないかなぁ、なんて」


 呆れてものも言えないが、一つだけ確かなことがあるとすれば。


「……期待してるようなもんは出てこねぇぞ」


 イヴの写真は掘り出せるはずのない場所に隠してあるから問題はない。

 この部屋にあるのは衣服や食料、ロックとダインが扱う銃に手入れ道具や弾倉といった仕事道具、そして時間を潰すための最低限の娯楽と少々の嗜好品程度。


 女を連れ込むこともない野郎二人の部屋だ。

 フィーネが望むような面白いものが発掘されることはまずない。

 ロックの声を無視して懸命にお宝発掘を続けるフィーネだったが、五分とたたずに音を上げた。


「むぅ……本当になにもないだなんて。あまりにも健全すぎて不自然ですね。年頃の男性二人が一つ屋根の下、なにも起きないはずはなく……」

「それは別の意味で恐ろしいわ。とにかく、この部屋には必要最低限のものしかねぇよ。世界が何遍も巻き戻るのに、不要なものを置いておく理由がない」

「むむむ……。もうちょっと、こう……いかがわしいものの一つや二つ、あっても罰はあたらないと思うんですが」

「期待外れで悪かったな」

「……お、なんか怪しげな箱を見つけました!!」

「あまりいじくるんじゃねぇぞ。そいつはダインが身につけている指輪の番いだ」


 もっとも、持ち主の指紋認証と声帯認証が揃ってはじめて解錠できるようになっている。登録者はダインの婚約相手であったフィーナ。

 ゆえに、いまとなっては誰にも中身を取り出すこともできない代物だ。


「……ふぅん。そうなんですか。おお、綺麗な指輪ですね」

「そりゃあダインが数年分の稼ぎをつぎ込んで買ったやつだからな…………って」

「鍵とか掛けてなかったんですか? なにやら大事そうな指輪ですが……」

「…………んな馬鹿な」


 ロックは目を疑った。


「……なんで解錠できてんだ」

「触ってたらなんか開きましたけど」


 あり得ない。そう表現する以外にはない事象が起きている。

 声帯と指紋の双方が完全に一致していなければ解錠できないはずだ。イヴでなければあけることが叶わないはずのそれが、どうしてフィーネにできてしまうのか。


「……お前、本当にフィーネ、なんだよな?」

「ええ、はい。そうですが……」

「偽名じゃないよな? 名前だけは本物だよな?」

「……うっ、そう言われると私自身もあれあれってなってしまいそうに……」

「そいつは俺の……っ、いや、ダインの婚約者以外には開けられない代物なんだ。そして、あいつはもうこの世にいない。俺たちの目の前で死んだから」

「えっ……」


 フィーネが押し黙った。


「フィーネという名前に嘘はないんだよな?」

「……間違いありません。たぶん。きっと。まぁ、証明しろって言われてもできないんですけど」

「…………そうかい」


 どうあってもそこは揺るがないのか。

 イヴの声と身体をもつ別人。そんな存在が目の前にいる。

 込み上げてくるこのやりきれなさをどう処理すればいいのか。

 ロックは肩を落とし、持て余した感情を溜息とともに吐き出して、身体をソファーに深く沈めた。


「……それ、もとに戻しておけ。そろそろダインが戻ってくる。箱が開いたことが知られたら、一日中問い詰められるぞ。俺も黙っておいてやる」

「うわぁ、それは勘弁ですね……」

「どこぞの誰かのせいであいつはただでさえ気が立ってる。そこに爆弾を放り込むようなもんなんだよ、その箱を開けちまったってことは」

「そう、ですね。いや、これはさすがに、うん…………」


 まるで爆発物を取り扱うような慎重さで、フィーネは箱を元の位置に戻した。

 そして。


「戻りました」


 タイミングを見計らったようにダインが買い出しから戻ってきた。


「きゃうんっ!?」

「む、なんですかいまの鳴き声は。もしかして僕のいない間にあの女が猫だか犬だかを拾ってきたんじゃないでしょうね!? このアパートはペット厳禁なんですよっ!!」

「どーどー、落ち着けダイン。お前がノックもなしに戻ってきたからフィーネがびっくりしただけだ」

「なんだ、そういうことですか」

「……ロックは驚かないんですね。急にドアを開けられたのに」

「ん? まぁ、こいつの足音は判別できるからな」


 何千年も聞いてきた足音だ。相棒の足音や息づかいくらいは判別できないと仕事でここぞというとき洒落にならなくなる。


「それはそうと買ってきましたよ。指輪よりはネックレスのほうが安く済みましたので、こちらを」


 言ってダインがフィーネに渡したのは、女性に人気ブランドの中価格帯のシルバーネックレスだった。安いとはいえ、初対面の異性にプレゼントするには少々値が張りすぎているような気もするが。


「そうは言いますけど……、これ、そこそこしますよね?」

「……察してください。さきほどのお詫びも兼ねて、ですから」

「なるほど。そうですか。……そういうことなら、ありがたくいただきます」

「これでさきほどの件はお互い水に流すということで」

「ふふっ……。少しは見直しましたよ、ダインさん」


 イヴと瓜二つの顔で穏やかに微笑むフィーネの顔をまじまじと見つめ、ダインは耳を朱に染めながらがりがりと頭を掻きむしる。


「早くそのネックレスに細工をしたらレッカの店にいきますよっ!!」

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