第141話 チート

「さて、君らクランに頼みたいことがあるのだが」


 クラン登録翌日、ギルドに顔を出したら、応接室でハッサンさん恒例の無茶振りを振られた。


「んで、今回は何ですか?」

「そんなしかめっ面するなよ。オレとお前の仲じゃないか」


 どんな仲だよ。誤解を招くからやめてもらいたい。

 オレの反応を見てニヤニヤしていたハッサンさんだが、本題に入ると真剣な顔になる。


「リン、チートって聞いたことあるか?」


 オレはハッサンさんからそのワードが出たことにびっくりして、思わずブックマンをチラリと見たが、ブックマンも驚いていた。


「その様子だと知ってるみたいだな」

「……名前くらいは」


 とオレの横に座っていたマーチが袖を引っ張る。


「何なの? チートって」


 見回せば、オレ、マヤ、ブックマンにハッサンさんにユキさん以外は理解してない様子だ。しかし、なんと説明したものか。


「オレも詳しくは知らないが、チートってのはこの世界の理を歪めちまう禁術らしい」


 なるほど、この世界の人から見たらそう映るのか。


「禁術か。相当ヤバいモノなのか?」


 とブルース。


「オレが聞いた話じゃ、使い続けると世界が崩壊しちまうらしい」


 ハッサンさんの言に、ざわりと応接室がざわめく。


「本当なのか?」


 と皆の視線がオレに集まる。ブックマンの方を見ると、任せるって顔をされてしまった。


「ハァー、らしいな」


 オレの発言にさらに応接室がざわめく。


「マザーが創ったこの世界はさ、相当絶妙なバランスで成り立っているんだ。だからもしいたずら半分、ちょっとした軽い出来心でそのバランスに手心加えただけで、その影響は世界中に波及して、世界崩壊、バッドエンドになるらしい」


 今度は静まり返ってしまった。


「で、ハッサンさん。オレらに依頼ってことは、そのチート使いの情報、それなりに掴んでるんだろ?」


 オレの問いに真剣な顔で頷くハッサンさん。


「場所はアダマス。今の冒険者たちの最前線さ」


 アダマスは確かダイヤが採れる国だったな。まあ、ことがことだし、急いだ方がいいか。


「分かった」

「ダメよ」

「は?」


 オレがハッサンさんの依頼を請けようとしたら、マーチに拒否された。


「なんで? どうゆうこと?」


 オレは意味が分からずマーチを見遣る。


「理由は簡単よ。リンが弱いから」


 ああ、確かにこのクランの中で一番弱い自負はあるけど。


「相手は禁術を使うのでしょう? どんなものか想像の域を出ないけど、きっと反則級の代物なんでしょう。そんなのと今のリンが戦っても、即行やられてお終いよ」


 ぐうの音も出ないな。確かにオレとチート使いとじゃ戦いにもならなそうだ。


「だが、チート使いを放っておく訳にもいかないだろ?」

「そっちには僕が行きますよ」


 とはブックマンだ。


「僕がアダマスに行って世界の崩壊を遅らせておくので、リンさんはなるべく早くレベルアップしてこっちに来て下さい」


 まあ、チートの存在を疑ってオレたちのパーティーに潜り込んできたブックマンなら、適任か。


「ああ、できるだけ早くアダマスに向かうよ」


 とブックマンと二人で頷き合う。


「じゃあオレは、バールド族の村に行ってくる。ガトリング銃が壊れちまったからな」


 とはブルースだ。すると、


「オレも行っていいか?」


 と三郎が手を上げた。それに続いてオレも私も、天使たちが手を上げる。どうやら先の戦争でブルースが持つ銃に興味を持ったようだ。

 結果、アダマスに行くのはブックマン。バールド族の村にブルースと三郎、四子、六子、七郎、九郎が行くことに、残るオレ、マヤ、マーチ、カナリア、烈牙さん、一郎、二子、五郎、八子、十子がトレシーで修行することになった。


「トレシーか。なんかもう懐かしいなあ」

「ふふ。今から覚悟しておくことね」


 とマーチだけでなく烈牙さんが含み笑いをしているのが気になる。


「皆は私と同じ修練場に行きましょう。私の紹介なら、修練に加われるはずだから」


 とマヤと天使たちもやる気のようだ。

 こうしてチート使いに対抗するため、オレたちはそれぞれ準備期間に入ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る