第129話 カナリア
コンフサー公の待つ領地へ、皆揃って帰る道。マーチさんはお怒り中である。
自身が大事にしていた人形が、ついぞ戦闘で跡形もなく焼失してしまったので、プンプンなのだ。
そんなマーチさんの周りを、一羽の真っ赤な小鳥が飛び回っている。まるで申し訳なく謝っているような小鳥は、実際に謝っていた。
「ごめんなさい。すみません。ごめんなさい。すみません」
とそれが鳴き声であるかのようだが、そうではない。小鳥の正体が不死鳥さんだから謝っているのだ。
「マーチ、そのくらいで勘弁してやったら」
思わず不死鳥さんに助け船を出してあげたら、
「別に怒ってないし」
とマーチにちょっとキレられてしまった。まあ、オレが出会ったときにはすでに使っていたものだし、愛着なり因縁なりがあったのだろう。不死鳥さんガンバ! と心の中で応援していると、
「人形がいるなら私が工面してあげるわ」
とのオーロ王女の申し出に、
「ホントに!?」
と目を輝かせるマーチ。
「ええ。サブルムの件の報酬もまだでしたしね」
ガッツポーズのマーチ。案外因縁は薄そうである。よかったね不死鳥さん。
「って言うか不死鳥さんはいつまでついてくるの?」
「ええ!? 私たちもう仲間じゃないんですか!?」
衝撃の事実発覚である。アキラ曰く、解放したら仲間になるパターンはあるそうだ。そういうものだろうか?
「あり得ない」
とボソリと呟く男が一人。ブックマンである。
「今の段階で不死鳥を倒してしまうこともあり得なければ、さらには不死鳥を仲間に? あり得ない。あり得ないあり得ないあり得ない! 今後のストーリー展開どうしてくれるんですか!?」
そんなのオレに言われても困る。そっちの上司と相談してくれ。
「そう言えば、不死鳥さんって名前なんて言うの?」
ずっと不死鳥さん不死鳥さんと呼んでいた。オレって失礼だな。
「不死鳥ですが?」
さも当たり前のように答えられてしまった。
「そうじゃなくて、固有名っていうのかな? オレならリンタロウ。で今まで謝っていたのがマーチ。とか、そういうの」
「…………不死鳥ですね。不死鳥はこの世に私一羽しかいないので、種族名が個有名です」
なるほど。不死だもんね。繁殖とかしなくていいもんね。
だが仲間となったからにはそれでは不都合である。街中で「不死鳥さん不死鳥さん」と語り掛けていては、要らぬちょっかいを吹っ掛けられてきそうだ。
「無いなら名前を付けよう」
「良いわね」
とはマヤ。こうして不死鳥さんの名付け大会となった訳だが。
「ゴンザレス」
何でだよ?
「マルコメ二十三世」
二十三世どこから来た?
「ライオン」
違う生き物だね。
「ゼバスチャン・カトリーヌ・アプリコット・ジャンジャック・シルベスター・美穂」
長いよ!
中々決まらない中、
「カナリア」
とマーチがボソッと一言。
「歌が上手だからカナリア」
満場一致で不死鳥さんの名前はカナリアに決定した。
「命の恩人に、何のもてなしもできず申し訳ない」
マーチがすぐにでも人形が欲しい、と言うので、オレたちはグラキエースの軍艦でとんぼ返りすることになった。
その見送りにコンフサー公一家が来てくれたのだが、何のもてなしも、と言っておきながら、宝箱10箱の宝石を持たせてくれるとは、さすが宝石の一大産地である。これが下手に市場に出回ったら、値段の低下が人工宝石のときの比じゃない気がする。
「では、オレたちはもう行きますね」
「今度こそさよならだと思うと寂しいわ」
女子組は全員で抱き合って泣いている。
「この国はもうあなたたちの故郷も同然。またいつでもいらっしゃい」
とはヤースープ公妃閣下だ。
「ではまた。さようなら」
「さようなら」
こうしてオレたちはルベウスと別れを告げた。
「ここは?」
「王宮の武器格納庫よ」
オレたちはアウルムに戻った後、王都でアキラと別れ、オーロ王女とともに王宮に来ていた。
「この中に、新武器開発室というものがあるの」
武器庫の扉を開けながらオーロ王女が語るには、その新武器開発室で今までに無いものを開発中で、それがマーチの求めるものに合致するのだそうだ。何だろう? ロボットが出てきてもオレは驚かないぞ。
「これよ」
それは金属の球体だった。何これ? 少なくともロボットでも、ましてや人形でもない。
「ファースト曰く、形状想起合金というものだそうよ」
形状想起合金? 形状記憶合金なら知っているが、初耳である。
「これはね。使用者の思う通りに形を変える不思議な金属なの」
王女がその合金にパスを通すと、まるで生き物のようにうねうねと動きだし、それは不恰好な人形へと姿を変えた。
「スゴい」
とマーチがポツリと呟く。その目がキラキラしていた。
「これなら、あなたの思うようにできるんじゃないかしら?」
オーロ王女の言に何度も頷くマーチ。
形状想起合金へのパスが王女からマーチに移行すると、マーチは早速人形にその姿を変えてみせる。さすが馴れたものと言うべきなのか、王女が造ってみせた人形などよりもしゃんとして、格好いいデザインだ。
「でも、こんな国の機密みたいなもの、もらっちゃって良いんですか?」
「良いのよ。だってあのファーストが開発に関わっているんだもの」
とオーロ王女。なるほど。
「では遠慮なくいただきますね」
こうしてマーチは新たな人形? を手に入れたのだった。
これもブックマン曰く、「あり得ない」だそうだ。
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