第122話 光子剣

「まあ、理屈としてはエネルギー波と同じだ。光子の物質化」


 言ってオレは皆の前で指先に小さなエネルギー球を作ってみせる。


「これを刃先に纏わせると、極小の刃を形成させることになり、切れ味が上がる」


 オレはポーチから一振りの剣を取り出すと、そこにエネルギー波をうっすら纏わせ、近くにあった木を一閃の元に切断してみせた。理屈としてはグラディオマキアに近い。


「おお~」


 皆から声が上がる。ヤースープ公妃閣下は切断された木の断面を撫でながら、「綺麗なものね」と感心していた。


「大事なのは光子を大量に刃先に纏わせれば良い、という訳ではなく、うっすらと纏わせるということ」

「何で? 大量に纏わせた方が威力が上がりそうだけど?」


 とはマヤだ。


「物理的に殴るって言うなら、その方が質量が嵩んで威力は上がるけど、今回は切断力を、切れ味を上げるのが目的だからな。うっすら纏わせると、それだけ刃先が鋭角になるんだ」


 なるほど、と皆納得してくれた。


「この説明で合ってるかな? ブックマン」


 木に寄りかかり、一人皆と距離を取ってこちらを見詰めていたブックマンは嘆息した。


「ああ、それで合ってますよ」


 何かちょっと声が不機嫌なんですけど? ブックマンが説明しないって言うからオレが説明したのに、何か理不尽だ。


「これをマスターすれば、そのデカい蟻に対抗できるのか?」


 とはアキラ。腕まくりをして、やる気十分って感じだ。


「多分な。これが通用しなかったら、何か他の手を考えよう」


 という訳で光子剣(オレ命名)の特訓が開始された。



 まずエネルギー波を覚えなければならない。とはいえ、そこはさすがオレのパーティーにルベウスの精鋭たち。2日もあれば皆がエネルギー波を撃てるようになっていた。

 そしてさらに2日を掛けて光子を刃先に纏わせることにも成功。皆優秀で何よりだ。

 その間魔法使いであるファラーシャ嬢はと言えば、公妃閣下とエネルギー波の強化に努めていた。



「どうする?」


 茂みに隠れるオレたちの前を、数匹のジャイアントアントが行進している。おそらく餌になるモノを探しての偵察部隊だろう。


「最後尾に少し離れた蟻がいる。あいつを襲おう。皆、一撃離脱で」


 オレの指示に皆が黙って頷く。

 そして息を潜めて最後尾の一匹が目の前に来たところで、オレは茂みから飛び出し、蟻に一撃を食らわせる。それだけで蟻は真っ二つにされ、魔核と素体に分解された。

 良し! とオレが密かにガッツポーズを取ると、前方を進む蟻たちが異変に気付き引き返して来た。


 シュッ!


 蟻が何かを吐きかけるきたのを、隙を見せてしまったオレは、もろに被ってしまった。

 蟻ということは蟻酸か? と思っていると、体が痺れて動かなくなる。神経毒かよ! と思っている間に地面に突っ伏してしまう。

 そこにガサガサギチギチと近寄ってくる蟻たちを、アキラやマーチ、精鋭たちが一撃で屠っていく。


「大丈夫か?」


 と駆け寄ってくる皆に、オレはパスで体が痺れて動けないことを伝えるので精一杯だった。



「あの神経毒は厄介だな」


 その後神父さんに毒の治療をしてもらい、開口一番オレが口にした言葉だ。


「でも光子剣は切れ味抜群だな」


 アキラが自分のグラディオフランマを眺めながらニヤニヤしている。それはマーチや精鋭たちも同じだ。


「そんなに良い感じだったんだ?」


 今回オーロ王女を守るためにお留守番をしていたマヤが尋ねてくる。


「おお! スパスパ斬れたぜ!」


 とアキラは剣を振り回してみせる。危ないな。


「とりあえず、これでオレたちの攻撃が蟻たちに予想以上に効くことが分かった。それと同時に蟻の攻撃が予想の斜め上だということも、だ」


 オレの言に皆が頷く。


「では、今から『蟻の巣を通って地下から外酷城に入り込もう作戦』を開始する」

「長い作戦名だな」


 とアキラに突っ込まれてしまった。

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