第123話 蟻の巣攻略戦1
「デカ!」
見上げるマヤたち。茂みから覗いたジャイアントアントの巣の入り口は、直径10メートルはある洞穴だった。
「象を運んでいたのを見掛けたからな、あれぐらいはないと無理だろう」
なるほど、と皆納得してくれた。
「でもどうするんだ? 門番がいるぞ」
アキラが言う通り、入り口には常に二匹の蟻がうろうろしており、たまに中から交代要員が出てきたりしている。よくできてるな。
「今回の目的は外酷城。蟻の殲滅じゃない。ブルース」
「ああ、ちゃんと試してある。蟻にも催眠は効く。ただ、効きの弱いヤツと強いヤツがいる」
「どれくらい?」
「よく効くヤツが二割、普通が六割、効きが弱いヤツが二割だ」
2−6−2の法則か。働き蟻は、よく働く二割とたまにサボる六割、サボってる二割で構成されているって話だけど、
「よく効くヤツと効かないヤツの違いって分かるか?」
「よく効くヤツより効かないヤツの方が強い」
面倒臭いな。よく働く二割の方が効かないのか。だがそれでも八割の蟻が眠るならありがたい。
「分かった。アキラとマーチが門番蟻を倒したらブルースは角笛を吹いてくれ。皆、オレたちの目的は蟻の殲滅ではなく、外酷城にたどり着くことだということを忘れないでくれ」
皆無言で頷く。まあ、ここまで来て目的分かってないやつなんていないか。
オレは門番蟻に向き合うと、指でアキラとマーチに指示を出す。
茂みから駆け出す二人は、こちらに気付いた蟻が仲間を呼ぶより早く、二匹の蟻を一閃する。
「よし、行こう」
マヤを前衛にオーロ王女を中心に守りながら、オレたちはなるべく足音を立てないように、それでいて素早く洞穴まで駆けていった。
洞穴を覗き込むと緩やかに下っていた。
「ブルース」
オレがブルースを見れば、すでに角笛を咥えて待機していた。
角笛が洞穴の中に向かって吹き鳴らされる。その後に訪れるシーンとした静寂。が1分としないうちにガサガサギチギチと蟻がこちらに登ってくる音が聴こえてきた。
「皆、戦闘準備!」
オレは皆に指示すると、オーロ王女を背負い剣を構える。
まず来たのは10匹。それに向かって先制攻撃を仕掛けたのは、ヤースープ公妃閣下だ。
エネルギー波を強化した新魔法、物質化させた光子を凝集させた槍、ライトニングスピアーを撃ち込む。
ズンッ!
と槍は一直線に蟻を貫き、さらにその後方にいた蟻までも突き刺してみせた。さすがお母様、凄い威力だ。
それに続くようにファラーシャ嬢もライトニングスピアーを撃つ。こっちは一匹を貫いただけだったが、十分な威力だ。
しかし二人の攻撃は蟻の前進を止めるまでには至らず、蟻たちは仲間などそこにいなかったかのように、こちらに近付いてきた。
「ハッ!」
アキラが気合い一閃、蟻を横一文字に切り裂く。それに続いてマーチが人形とともに二匹を素早く屠る。ヤースープ公妃閣下の精鋭も負けていない。残る四匹を簡単に片付けてみせた。
「意外と残ってるな」
とぼやくアキラ。
「まだまだ来るぞ」
ブルースの言葉通り、蟻たちの足音が近付いてくるのが分かった。
「移動しよう」
オレの提案に否を唱える声はなく、オレたちはすぐに入り口から移動を始めた。
「はあ、はあ、ホントにこれで減ってるのか?」
何度目かのぼやきをこぼすアキラ。蟻の巣の中を行っては戻り戦闘、行っては戻り戦闘、たまに角笛、で自分たちがどこにいるのか迷子になりそうになりながらも、方位磁石を頼りにオレたちは蟻の巣を進んでいた。
「ちゃんと眠っているのは、いくつかの部屋で見てきただろ?」
ここまでくるのに、いくつかの部屋に突き当たってきたが、その部屋で蟻たちはよく眠っていたし、何なら通路にも眠っている蟻がゴロゴロいる。アキラとはいえ、うちのブルースをあまり馬鹿にしないでもらいたい。
「はあ、はあ、ここどこ?」
さらに時間が経過したが、一向に外酷城への出口は見えてこない。というより、蟻たちによって下へ下へと追いやられて、上に登れないというのが正しい。当初の予定では、できるだけ横に横に進んで、外酷城に最短でたどり着くはずだったのだが、予定というのは何かと狂わされるものである。
「次の部屋で一旦休憩にしよう」
オレの言に皆頷く。さすがに疲れた。
通路に蟻がいないのを確認し、オレたちは部屋へと駆けていく。
「フゥーーーーー」
オレは部屋に着くなりオーロ王女を降ろそうとするが、王女は意固地になって降りようとしない。
「あの、降りてもらわないと休めないのですが」
オレがそういうと、王女は部屋の奥を指差した。オレが釣られて指差された先を見ると、まるで体育館のように広大な部屋で、巨大な蟻よりさらに10倍は巨大な蟻が、こちらを見下ろしていた。
「じ、女王蟻……!」
武器を構えるオレたち。通路の方からは、ギチギチと蟻が近付いてくる音が聴こえていた。
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