第118話 さよならパーティー
「で、どういうことか話してもらおうか」
オレたちが泊まっているホテル、その一室、オレが泊まっている部屋だ。
いるのはオレとマヤ、そしてブックマンと自称する青年である。マーチとブルースはいない。間違ってもこの話に加える訳にはいかないからだ。
「私たち、何も悪いことしてないわよ」
「かも知れませんし、そうじゃないかも知れません」
ニコニコ笑顔だが、ブックマンはマヤを肯定はしなかった。
「お二人も気付いているでしょう? 自分たちが他のプレイヤーとは異質なことに」
それを言われると黙るしかない。
「ログは見させていただきました。確かに不正アクセスや不正操作を裏付けるものは発見されませんでした」
「だったら……」
「だから僕が派遣されたんです」
マヤの言葉を塞ぎ、ブックマンはため息を漏らし話を進める。
「このマグ拳ファイターというゲームは、
「どういうこと?」
マヤがオレに尋ねてくる。何故オレに聞く?
「今言われたことから推察すると、不正操作でこの世界が崩壊すると、そこに意識を繋いでいるオレたちプレイヤーも危ないってことだろ?」
「その通りです」
オレの意見に強く頷くブックマン。
「でもさあ、だったら何でマグ拳はプレイヤーを受け入れてるんだ?」
「それがマザーの意思だからです」
マザー、ね。そう言えば、この世界の教会が信仰してるのも、マザーって言うんだったな。
「とにかく、あんたを受け入れて、オレたちが不正を行っていない、と証明すれば良いんだな?」
オレの言にブックマンはニッコリ笑って頷く。
パンッ。
オレは拍手を一回打って空気を入れ替える。
「よし! じゃあこの話はこれで終わり! マヤも思うところはあるだろうが、ひとまずブックマンは受け入れるってことでいいな?」
「まあ、リンがそう言うなら」
とマヤが渋々ブックマンを受け入れたところで、オレたちが部屋から出ると、そこにブルースとマーチが待っていた。
「話は終わったのか?」
ブルースが聞いてくる。
「今回の案件も、中々厄介らしい」
オレはブルースに苦笑いを向けることしかできなかった。
ところは少し替わって同ホテルのレストランの個室。
オレたちはファラーシャ嬢のさよならパーティーを開いていた。
いるのはオレにマヤ、マーチ、ブルース、アキラ、オーロ王女にブックマン、そして本日の主役、ファラーシャ嬢。
「ああ、ファラーシャちゃん、本当に国に帰ってしまうのね!」
マヤがファラーシャ嬢の横で、まるで今生の別れのように泣いている。
「私も悲しいわ」
とファラーシャ嬢も泣いている。オーロ王女もマーチまで。女子ってどうしてこういう場で泣けるんだろう。
「リン! ちょっとドライ過ぎじゃない?」
オレが邪魔にならないように静かに食事をしていると、マヤに人間じゃない、みたいな顔を向けられた。
「いや、悲しいけど、これが最後じゃないだろ?」
「そうかも知れないけど、そうじゃないかも知れないじゃん!」
うーん、温度差。
(別れはちゃんと済ませておいた方が良いですよ。ルベウスへ行けるようになるのはまだ先ですから)
オレの横でブックマンがそんなことを囁く。ほう。そうなのか。そう言われると寂しさもひとしおだが、オレの態度は変わらない。
「リン、お前はもう少し感情を出せ」
絡んでくるのはアキラだ。こいつも泣いている。
「何でオレにばっかり言うんだよ。ブルースだっておんなじ感じだろ?」
と皆の視線がブルースに向く。そこでわざとらしく涙を拭ってみせるブルース。
「やっぱりリンとは違うな」
全員が頷いた。くっ、ブルースめ、上手く切り抜けやがった。
それからはオレへの恨みつらみやダメ出しで盛り上がり、会の盛り上がりが最高潮になったところで、その報せはもたらされた。ファラーシャ嬢の老執事が個室に入ってきてこう言った。
「ファラーシャ様! ルベウスにてお父様が危篤だと報せが!」
シンと静まりかえるパーティー会場。
パンッ。
オレは拍手を一回打って空気を入れ替える。
「オーロ王女、グラキエースととの友好条約はどうなりました?」
「え? ええ、つい先日無事締結されましたけど?」
意味が分からない、といった顔のオーロ王女にブックマンだが、それさえ分かればオレたちには十分だ。
「馬車はオレたちのクランのでいいな」
アキラはパスで素早く馬車の手配をしてくれる。
「アキラありがとう」
アキラに礼を言いながら、オレたちはレストランを後にした。
夜中馬車を飛ばし、朝にはフィーアポルトに到着。そこから小船でまだ沖合いに停泊していたグラキエースの軍艦に横付けた。
「イセ提督はおられますか!? 急な要請で申し訳ないのですが!」
ズカズカとオレたちが軍艦に乗り込むと、巨人たちが驚いて船室から出てくる。
「どうされました? リンタロウ殿」
驚いているイセ提督に事情を説明する。
「分かりました。ではすぐにルベウスへ向かいましょう」
とイセ提督は船室に引っ込んでいった。
「な、何をしようというんだ?」
まだ状況についていけてないブックマンは放置し、虹水晶を持って再び現れたイセ提督の元へ。
「では良いですな」
「はい。やってください」
皆祈るように頷いていた。
「レディーレ・ルベウス!」
こうしてオレたちはルベウスへ瞬間移動したのだった。
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