第112話 一所懸命

「ぐわはっ!」


 斥力バリアを使っても、青い悪魔の軍団の攻撃を受けきるのは難しく、オレは出発地点まで押し戻されてしまった。


「大丈夫か?」


 心配そうに声を掛けてくれるのはラマド王子だ。

 そのラマド王子自身、教会派に守られて、なんとか悪魔たちの攻撃をしのいでいるような状態である。これは長く保たないのが一目で分かった。


「大丈夫です。少々苦戦しただけで、ここからが本番ですよ!」


 我ながら口先だけは一丁前である。だが、悪魔の軍団は質、量ともに高いレベルなのだ。これは三人も相当苦戦させられているだろう、とチラリと三方を見ると、


「イヤアアアアアッ!!」


 マーチは気合いの雄叫びを上げ、人形とともに四本の小太刀で悪魔たちを切り刻んでいく。その剣閃に迷いはなく、一撃一閃で悪魔たちは倒されていく。

 まあ、マーチは元から強いしな。


「ハアアアアアアッ!!」


 他方からも気合いの雄叫びが聞こえる。見ればマヤの炎鬼の大盾から炎が噴き出し、悪魔たちを焼き焦がしていく。それもう盾じゃないよね? 斧の方を見ると、斧にも炎をまとっている様子から、火炎小手の能力なのかも知れない。

 まあまあ、マヤもオレより強いからなあ。支援タイプのブルースは苦戦してるだろう。とブルースを見ると、ここが一番ヤバかった。

 何せ両手で抱えているのは、いつもの角笛じゃなく、黒光りする重そうなガトリング銃だからだ。ポーチ型のマジックボックスから弾薬を充填されたガトリング銃は、六つの銃身を高速で回転させ、ブルースが引き金を引くと、


 ダダダダダダダダダッ!!


 爆音とともに弾丸が射出され、悪魔たちを木っ端微塵にしていく。その様は、ちょっと悪魔たちが可哀想になるほどだ。上空から事の成り行きを見ている悪魔サードも、何あれ? ヤバくない? って顔してるし。

 ああ、うん。理解した。オレのパーティーで一番弱いのはオレだ。認めよう。認めた上で、負けたくない。こうなりゃ、オレが指定の場所に一番乗りしてやるよ!



 バシッと両頬を叩いて気合いを入れ直すと、オレは青い悪魔の軍団に向き直る。


「フゥー……」


 息を吐いて冷静になれば、何のことはない、奴らは数と質で迫る壁となってこちらに向かってきているだけで、何か不規則な行動をしたりしている訳じゃない。


 一体の悪魔が先行してオレに襲い掛かってきた。

 それをオレは小鬼の小手の仕込み刃で、その首をはね飛ばす。

 よし。これなら問題なく先に進めそうだ。と思った矢先、ピキンと小手の仕込み刃が刃こぼれしたのが分かった。

 なら礫弾ならどうか? と周辺に転がる瓦礫を大量に悪魔たちにぶつけてみる。が、これは足止めにはなったが、瓦礫では悪魔たちは傷一つついていなかった。

 これもダメか。なら金剛弾ならどうか? とポーチからダイヤを取り出し撃ち出してみる。とこれは効果があった。

 ダイヤに頭を撃ち抜かれた悪魔が一体、その場で崩れ落ちるが、悪魔たちはそれを踏みつけてこちらにやってくる。数の暴力がきついな。元が炭とはいえ、金剛弾用のダイヤにも限りがある。王都中の兵隊分は、さすがに用意してないぞ。

 次にエネルギー波を撃ってみる。効きはしたが、金剛弾ほどではなかった。金剛弾のストックが切れたらエネルギー波、これでいこう。



「はあ、はあ、はあ……」


 満身創痍とはこのことを言うのではなかろうか?

 小鬼の小手の仕込み刃はすでに折れて原形はなく、お気に入りのジャケットコートもズタボロ。金剛弾用のダイヤもとっくの昔にストックは切れ、エネルギー波の撃ちすぎで何度ポーションを飲んだか分からない。切り傷擦り傷打ち身に捻挫、おそらく肋骨のいくつかは折れているだろう。ポーションでの回復が追い付かないのだ。

 息をするのも辛いなか、重い足を何とか前に進め、やっと指定の場所にたどり着こうか、というオレの前に、その怪物は現れた。

 おそらく元は人間だったのだろう。それは沢山の人間をぎゅっと丸めてもう一度人の形にしたような巨人。悪魔サードの無邪気な悪意で造られたおぞましさの化身。

 本当にあいつは人間を何だと思っているんだ。

 おぞましさに目を逸したいのをグッと我慢し、最後のポーションを飲み下すと、オレはグラディオマギアを手に掴み、襲い掛かってくるその怪物を、斥力ブレードで一閃の元に消滅させる。


「はあ、はあ、これで、お終いだ」


 オレはポーチから宝玉を出すと、ラマド王子にパスで連絡を入れる。

 その直後、天へと五つの光の柱が上り、王都は眩い白光に包まれた。

 光が収まると辺りはシンと静まり返り、清浄な空気が場を包む。成功だ。と議会場に目を向けると、


 ドンッ!!


 爆発音とともに現れたのは、体長30メートルはあろうかという、黒と青を混ぜ合わせたような奇怪な何かだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る