第111話 特攻

 悪魔と化したサブルム王たちが突進してきた衝撃で、議会場の会議室は崩壊する。

 壁や天井だった瓦礫がサブルム王たちの攻撃とともにオレたちを襲うが、その一切がオレたちに通ることはなかった。マヤが炎鬼の大盾をエフェクトによって広く球状に展開したからだ。


「ふーん、やるじゃん」


 背中から蝙蝠のような翼を出した悪魔サードが、空からオレたちを見下ろしている。


「サード! 父上に何をした!」


 下からサードを睨み付けるラマド王子だが、サードは涼しい顔だ。


「分かってるんじゃないのか?」


 オレがそう言うとラマド王子は顔を反らした。認めたくないのだろう。


「そこの坊やの勘繰り通りさ。殺して、それを素体に魔核を埋め込み、魔物として生き返らせたのさ」


 瓦礫の中でこちらと相対するサブルム王たちは、殺意以外の感情がないかのようにこちらを睨み付けている。


「素体に魔核か……。もしかして、ダンジョンコアがいくら回収してもいつの間にかダンジョンにあるのって、お前の仕業か?」

「はあ? ああ、お前ら見かけない顔だと思っていたが、もしかしてアウルムからやって来たのか? あそこは僕の管轄じゃない。ファーストの管轄だ」


 他にも悪魔がいるのか。まあ、三番目サードなんて呼ばれてるくらいだもんな。


「僕はあんな引きこもりとは違う。やるなら、面白可笑しく、こうやるのさ!」


 サードが指を鳴らすと、ラハドや親父さんのところに、パスで連絡が入ってくる。その内容は、王都各地で兵隊たちが悪魔化し、暴れまわっているとの報告だ。


「やってくれるな。どれだけの人間を殺したんだ?」

「んー、王都の兵隊、全員かな」


 やってくれるぜバカ悪魔が。


「ヤバイぞ。王都各地の悪魔たちが、こちらに集結しつつあるようだ」


 とはラハド。


「ああ、見えてるよ」


 青い軍団が静かな波のようにこちらへ向かってくるのが見える。

 さすがに多勢に無勢が過ぎる。相手の強さも人間だった時の比じゃない。これは詰んだかな。だからってそれで良いわけない。オレとマヤはただゲームオーバーになって復活できるが、マーチやブルース、それにここにいる教会派の皆は復活できないのだ。いや、最悪、素体となって魔物化させられてしまう。

 そんなのは絶対に嫌だ!

 だというのに、こんな時にオレの脳ミソは働いてくれない。何も良い案も策も浮かばないのだ。何のためにオレは日々本を読んできたのだろう。


「策ならある」


 そう言ったのはラマド王子だ。


「教会には悪魔に対抗するための祓魔術が密かに教え伝えられてきている」


 そうか! エクソシズム! 何でこの答えにたどり着かなかったんだ、オレ!


「じゃあ、ラマド王子ならこの状況を打開できるんですね?」


 だが王子は首を横に振る。


「我一人では無理だ」


 なんだよ! 気を持たせやがって!


「それはつまり、何人か人がいれば打開できるんだな?」


 オレは心の波風はおくびにも出さず、冷静にラマド王子を問い詰める。それに首を縦に振るラマド王子。


「ここに五つの宝玉がある」


 言って王子が修道士服の袖から取り出したのは、片手で握り込めるぐらい玉だ。

「これを王都の五方へ持っていき、巨大な五芒星を作ることができれば、最強の祓魔魔法「イペロコス・エクソシスム」を発動できる」


 そう聞くが早いか、オレ、マヤ、マーチ、ブルースは、ラマド王子の手から宝玉を奪い取っていた。


「その役、オレたちがやろう」


 オレの言葉に三人が頷く。そして残るもう一つの宝玉。


「困ったな。我は陣の中央で呪文を唱えなければならない」


 するとラマド王子の手から最後の宝玉を奪い取る手があった。ラハドだ。


「できんの?」


 疑うオレたちの目に、しかしラハドはニヤリとすると、指笛を鳴らす。

 それに応えるように上空より飛来する影一つ。グリフォンだ。そういえばラハドにはグリフォンという強い味方がいたのだった。


「オレが一番乗りだぜ!」


 そう言ってラハドはグリフォンに飛び乗ると、彼方へと凄い速さで飛んで行ってしまった。まあ、あいつは放っておこう。


「それじゃ……」


 オレが宝玉を握った手を突き出すと、三人も同じようにしてくれる。重なる四人の手。


「死ぬなよ」

「「「おう!」」」


 四人バラバラに散り、青い軍団への特攻が始まる。

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