第106話 グリフォン

 パパァンンッ!


 シンデレラさんは両手に持った短銃を撃ち終わると、すぐさまそれを放り捨て、袖から新しい短銃を取り出してはまた撃っては放り捨てる。を繰り返す。あんたいったいいくつ短銃隠し持ってるのさ?

 敵は兵隊。シンデレラさんと話しているところに乗り込んできたのだ。

 炎鬼の大盾を防壁として、オレたちは籠城戦を強いられていた。

 こういう時マーチの人形は役に立つ。隘路あいろの横穴では味方同士も邪魔になるが、人形一体を盾の外に出し、オレたちは盾に隠れて遠距離射撃に専念できるからだ。シンデレラさんは短銃、オレは礫弾、そしてブルースは新しくバールド族に造ってもらった拳銃オートマチックをぶっ放っている。

 しかし敵もさるものと言うべきなのだろうか? 次々仲間の死体が積み上がる中、銃や魔法を容赦なくこちらへ撃ってくる。それは仲間に当たろうとお構い無しに見え、オレには敵が一層不気味に思えた。


「数が違いすぎるな。このままじゃ死体に生き埋めにされるぞ」


 冷静に呟くブルース。ハイハイ、道を切り開けばいいんでしょ?


「デカいのいくよ!」


 死んだ人には可哀想だが、オレは入口に向かって爆弾岩をそのまま投げつけた。


 ドオオンッ!


 兵隊たちが吹っ飛ぶ中を、オレたちは大盾を先頭に強引に教会の外に出ると、的を絞られないようにバラける。と同時に教会の入口が爆発の影響で埋まった。

 外にはうじゃうじゃと兵隊たちが順番待ちをしており、それらと一対多で戦っていく。

 個としての戦闘力はこちらが上だったが、これは多勢に無勢がはなはだしかった。バラけたはずがいつの間にか相手の計略で一つ所に集められ、オレたちは仲間を背にした戦いを強いられる。

 敵の指揮官らしき男が、今にも一斉射撃の号令を下そうというときだった。空から獣がその指揮官に襲い掛かったのは。

 ライオンの身体に鷲の頭と翼を付けたその獣は、まさしく物語に登場するグリフォンだ。

 グリフォンは指揮官を失って一瞬固まる兵隊たちを見逃さず、くちばしで爪で蹴散らしていく。


「今だ! かかれー!」


 さらに上から声が聞こえたと思ったら、大勢の男女が縦穴を降りてきて、兵隊たちと戦い始めた。


「退却!」


 指揮官の代わりに指揮を取る副官の退却の号令で、またも兵隊たちは早々に縦穴から立ち去っていった。


「ふんッ、骨のない奴らだ」


 いつの間にかオレの横にいた20代半ばの男が鼻を鳴らし、厳しい顔で退却する兵隊たちを見送っている。


「ラハド!」

「シンデレラ!」


 シンデレラさんにラハドと呼ばれたその青年は、シンデレラさんとの再会に顔を綻ばせ、両手を広げて抱き締めようとするが、シンデレラさんにスカッとかわされてしまった。


「どちら様ですか?」


 首を傾げるオレたちに、


「ラハド。教会派の中心人物の一人よ。若年層のまとめ役をしているわ」


 なるほど。そしておそらくシンデレラさんに気がある、と。そしてあのグリフォンの主なのだろう。グリフォンがラハドに寄り添っている。


「シンデレラ、何故一人でこんな場所まで来たんだ? あれほど一人で出歩いては危険だと言ったのに」


 心配そうなラハドに、シンデレラさんは首を横に振る。


「ごめんなさいラハド。でも私、どうしてもここの人たちのために祈りを捧げたかったの!」


 とシンデレラさんは手を合わせ天に祈っている。それに合わせてラハドを含めオレたちを助けてくれた男女が祈り始める。


(どういうこと?)


 マヤが小声でオレに尋ねてくる。


(多分この人たち、ここに住んでた難民たちが軍に殺されたと思ってるんだよ)


 オレの説明を聞いたマヤが、


「なんだ。ここの人たちなら……」


 と言いかけたのを、オレたち三人で口を抑えて黙らせる。


(何するのよ!)

(バカか!? こんなところでバールド族が生きてることを教えてみろ。戦争の道具にされるだけだぞ!)


 オレの説明で慌ててマヤは自ら口を塞ぐ。幸いだったのは、シンデレラさんたちが祈ることに夢中で、マヤの声が届いていなかったことだろう。



「ところでシンデレラ、こいつらは何者だ?」


 とラハドがオレたちの素性をシンデレラさんに尋ねる。


「この方たちは、たちは…………、あなたたち何者なんですか?」

「いや、旅の者ですけど」

「だ、そうです」

「それで良いのかシンデレラ!?」


 ラハドに突っ込まれるシンデレラさん。


「良いのです。私とともに戦い、またここの人たちのために祈ってくれたのですから」


 祈ってはいないけどね。

 シンデレラさんの強引な説得で、オレたちの存在は有耶無耶になり、仲間として教会派のアジトへと迎え入れてくれることになったのだった。

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