第54話 未来の幕開け

咲良ちゃんの左側に、アテナが堂々と立っている。

咲良ちゃんは、今初めて目にしたデュエットの相手を見ている。

するとアテナは咲良ちゃんの方を向き、しゃべりかける。


≪さぁ!少し前に出ましょう!咲良さん!≫


「えっ?」


この声に聞き覚えがあった。

前の事務所で社長に襲われていた際に、スピーカーから聞こえてきた女の人の声と同じだ。


≪咲良ちゃん!さぁ、1歩前へ!!≫


その声で我に返り、言われたとおり1歩前に出る。


「それではご紹介いたしましょう。今現れた彼女は、実は人間ではありません」


「えっ?」


咲良ちゃんはびっくりして、アテナの方を見る。

観客たちにもざわめきが起こる。


「彼女は、我がツブッターが総力をあげ作り出したAIです。そしてそれをホログラムによりまるでそこにいるかのように映し出されているのです!」


観客たちから、すごいとかありえないとかの声が上がる。


「そんなこと、ありえないという人はたくさんいるでしょう。しかしこれは近い将来当たり前となるのです」


みんなアテナに興味津々みたいだ。


「さぁ、まずは体験して頂きましょう!彼女たちの奏でる歌を存分までにお楽しみください!」


そういうと、音楽と色鮮やかな照明が辺りを照らす。


≪さぁ、歌いましょう!咲良さん≫


「はい!」


そして、彼女達が歌い出すと同時に、音楽に合わせてホログラムで映し出されたシャボン玉の球体であったり、小さなアテナが観客席に出現する。

観客たちはそれに驚き、恐る恐るそれに触れると、シャボン玉ははじけ飛び、アテナのミニキャラは触れられた方向に押されてこけそうになったりと、様々な演出がされた。

観客たちは、西城咲良とそして最新技術のホログラムを体験し、1番の盛り上がりを見せた。

俺の横にいる由愛や里奈もその歌やホログラムを体験し、とても楽しんでいた。


「よかった。どうやら成功みたいだ」


俺はそっと息を吐く。




すると、歌は終わったようだ。

長かったようで短かった時間。

終わった瞬間、盛大な拍手が彼女たちに向けられた。

咲良も、無事最後まで歌い終えたようだ。

咲良とアテナは、満面の笑みで観客に手を振っている。

するとそこに、ホログラムの打ち上げ花火が何発も空に打ちあがった。

ホログラムを使えば、何でもありだというのを皆に見せつける。

観客はそのホログラムの演出の度に、すごい喜びの声を上げていた。

やはり今までに見たことがない技術に触れるという事は、すごい刺激になり楽しいようだ。

そして声が響き渡る。


「私たちツブッターは約束しましょう。このホログラムを取り入れ、より楽しい遊園地にしていきます」


「その改装工事のため、やむなく明日よりしばらく休園しますが、再び皆様の前に戻ってきますので、ぜひその際は再び足を運んで頂けると幸いです!」


「それでは最後に、未来の幕開けにふさわしい歌を奏でてくれた彼女たちを、盛大な拍手でお送りしましょう!」


その瞬間、観客席からすごい量の拍手が鳴り響いた。

そして応援の声も上がる。


「西城さん!これから頑張って!」


「応援してるよー!」


そういう声に対して、咲良ちゃんは「ありがとー!」と手を振りながら返事をする。

そして咲良ちゃんは舞台から出ていき、アテナはその場で消えていった。


そして彼女たちが見えなくなってもしばらく拍手は続いた。

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