第34話 遊園地(後編)

落ち着いた俺達は、お化け屋敷にやってきていた。

これもまた人が並んでおり、30分以上並んでやっと順番が回ってきた。

このお化け屋敷は歩いて進んで行く、昔からよくあるタイプのお化け屋敷だ。

入口から入った由愛は珍しく少し怖がっていた。


「結構怖いねカズ兄」


「確かに」


学校の文化祭などと比べると全然クオリティが高かった。


「何あんた達、作りものなんだから怖いわけないじゃない」


里奈は先ほどとは打って変わり強気だ。

由愛は俺の腕にしがみつきながら歩く。

俺は由愛の胸の成長を腕に感じながらお化け屋敷を進むのであった。

すると足元から冷気が漂い無数の手が飛び出てきて、俺達の足にそれが触れる。


「きゃーーー」


由愛は俺の腕にさらにしがみつく。


「いいな・・・」


里奈はそれを見て何かつぶやいている。

すると里奈も腕にしがみついてきた。


「里奈?」


「由愛ちゃんだけずるい・・・」


これが両手に花か。

由愛は妹だが・・・。


俺たちはその後もお化け達をかいくぐり進んでいくと、木が生い茂っている道に出てきた。


「雰囲気あるな~」


「こんな怖く作らなくてもいいのに」


由愛はもう愚痴を言っていた。


「怖くなかったらお化け屋敷じゃないでしょ!」


その言葉に里奈が突っ込む。

まぁ、それはそうだが。

すると、木と木の隙間からオバケの顔が続々と出てきた。

その瞬間に後ろから音がしたので振り返ると、首長オバケの顔が迫ってきていた。

俺達は叫びながら奥に走っていった。


一番奥と思わしき、墓場にたどり着き、息を整える。


「はぁはぁ。お化け屋敷怖すぎだろ!」


「カズ兄、私もう無理!」


「なかなか良く出来てるじゃない!」


確かに良く出来てる。

今いる場所は周りは墓で、目の前に大きな小屋があった。

すると墓の方から人魂がふわふわと漂い始めた。


「うわっ!人魂だ!!」


由愛は立ち止まる。


「おい由愛!進まないと出口まで辿り着けないぞ!」


「あっそうだった!」


由愛は再び足を進めるが次の瞬間、墓の下からゾンビが次々と出てきてこっちに迫ってこようとしていた。

由愛は叫びながら早く出口に向かうために俺の腕を引っ張りまくった。


「おいおい!そんな引っ張るなよ」


しかし由愛は力を弱めない。

すると目の前の小屋の扉が開き、その中に巨大なお化けが口を開けて待ち構えていた。

由愛は、「ぎゃー」と叫びながら引き返そうとした。

次の瞬間に床が滑り台の様に傾いていき、俺達は寺のお化けの口の中に向かって滑り落ちていく形となった。


「あ~~~。カズ兄!」


由愛はそう言うと俺に抱き着いてくる。

そしてこれには里奈も驚いており、悲鳴を上げながら滑り落ちていく。

そして、お化けの口の中に滑り落ちていき、その先は出口と書かれた場所だった。


「終わった・・・」


俺はそうつぶやくと由愛が体を摺り寄せながら抱き着く力を強め、離れようとしない。


「おい由愛、終わったぞ!」


まったく、もう中学3年生なのにどんだけ怖がりなんだ。

そして里奈がこっちを見てわなわなしていた。


「あんた達、兄弟で何やってるのよ!」


「おい由愛、落ち着け!」


俺はそう言い由愛の頭をなでると落ち着いていった。

すると、落ち着いた由愛は何事もなかったようにしゃべりだす。


「まぁ!演技ですけどね!」


涙を流しながら由愛はそう言った。


「そんなわめないだろ。泣いてるじゃん!」


俺はおちょくると、由愛は何かに気付いてニヤリと笑う。


「それなのにお兄ちゃんは、こんなに元気にして!」


それを見た里奈は顔を赤くして叫ぶ。


「だからあんたら兄妹でしょ!!」


その後も俺たちはアトラクションを楽しんだ。


気付けはもう昼の3時を回っていた。

そんな俺達はそろそろ帰るかという話になっていた。

何故かというと、朝方よりも客の数が増えてきたからだ。

待ち時間も1時間とか当たり前になってきて、正直辛いのだ。


「もっと人がいないときに来たかったな」


「うん、でも十分遊んだし満足したよ!」


「まぁ、こんな場所で遊ぶのも、たまには悪くはないわよね!」


皆満足したようだった。

俺達は帰るために遊園地の出入り口に向かっていると、あるポスターが目に飛び込む。

それは閉園時にライブをやるというポスターで、西城咲良がラストに特別ゲストとデュエットをするらしい。


「へぇ~、西城さんがここでライブやるのか。地元アイドルってことで出るのかな?」


「西城って、お兄ちゃん達の高校にいるアイドルの人?すごいね!」


「あ~、噂で聞いたかも!今はこのライブに向けて練習が大変で学校にあんまり来れてないっぽいわね」


練習か・・・アイドルも大変だな。


「ねぇカズ兄!この閉園ライブ見に行きたい!」


「いいわねそれ!ついでに早めに来て遊びましょうよ!」


2人とも今日だけじゃ遊び足りないみたいだ。


「まったく、しょうがないな2人とも!」


俺はそう言いながら、そのポスターの写真を撮って、ツブッターに上げとくことにした。

地元の遊園地潰れるみたい!という内容で。

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