第35話 アイドルに挨拶されました

今日からまた学校か。

俺は里奈の目覚めの声を聞いて、起きる。


「おはよう!アテナ!」


≪おはようございます!マスター!!≫


アテナの元気な声を聞きながら着替える。


≪あ!マスター。今日は夕方雨の予報なので折り畳み傘を持って行くといいと思われます!≫


お!ついに雨が降るのか。

ここ最近雨が全く降っていなかったので、良かった。

雨が降らず水不足のニュースが流れると、毎年ついつい心配してしまう。

そしてそのニュースを見て心配している皆の不安を洗い流すかのように、雨は期待通りすぐ降ってくれるのだ。

今日はアテナの言う通り、折り畳み傘を持って行った方がよさそうだ。


「さすがアテナ!ありがとう!」


≪えへへ≫


俺がそういうとアテナはどうやら照れたみたいだ。

かわいい奴め!


俺は着替え終わり1階に下りて朝食をとる。

するとテレビでニュースが始まった。

どうやらまたどこかのアイドル事務所が潰れたみたいだ。

由愛はそのニュースを見て「えっ!」とびっくりしまじまじとニュースを見ていた。

俺は気になったので聞いてみた。


「このアイドル知ってるのか?」


「えっ?お兄ちゃん、このアイドルグループ知らないの?」


「・・・全く存じ上げません!」


由愛はため息をついた。


「日本中のほとんどに人が知ってると思うよ!自分たちの番組も持ってたし、超人気者だよ!」


由愛は信じられないと言わんばかりに言ってくる。

そんな人気のアイドルグループの事務所ですらもう潰れる時代なのか!

もうそうなったら、どんなアイドルであっても、このような状況になりえるという事だろう。

もう昔と違い、今ではSNSを使えばだれでもアイドルになれるみたいだし、時代の流れってやつだ。

今後、アイドル業界はどのようになっていくのだろうか。

俺はアイドル業界の未来を考えながら朝食を食べた。


朝食を終えた俺は、いつも通り登校していた。

すると後ろから声がかかったので、振り返るとそこには須藤がいた。

須藤はどうやらご機嫌だった。


「どうした須藤?機嫌良いじゃないか!」


「分かるか?山田!!」


「実はな、咲良たんのツイッター見てたら、楽しくてよぉ~」


あぁ、アイドルの話か。

同じ高校に通ってるアイドルを推してるとだけあって、身近に感じていいのかもしれない。

すると須藤は「お!」と声を上げ指をさした。


「今日も咲良たん登校日みたいだ!朝から見れてラッキー!」


須藤はそう言うとそのアイドルをガン見していた。

ちょうど校門に入るタイミングが合ってしまった。

するとその子はこちらに気付いたみたいで、あいさつしてくる。


「先輩方おはようございます!」


「おう、おはよう!」


俺は普通に挨拶する。

須藤はすぐに、その子に近付き手を取った。


「いつも応援しています。あなたの須藤です!」


すると西城さんは、顔を少しひきつらせたような気がしたが丁寧な対応をする。


「は・・・はい。ありがとうございます」


その瞬間、須藤は興奮が最高潮に達したのか倒れてしまった。

西城さんは心配そうにそれを見ていた。


「あぁ、もうこいつここに置いといていいから。早くしないと遅刻しちゃうよ」


俺はそう言うと教室に向かうことにした。

すると西城さんも、俺が言った通り倒れた須藤を無視して教室に向かうことにしたらしい。

少し進んだところで、西城さんは声をかけてきた。


「すいません!あの・・・」


俺は振り返った。


「近所の遊園地潰れちゃうんですよね」


俺はまさかの質問に、少しだけ放心した。

西城さんも、あの遊園地に思い入れがあるのだろう。

だからライブにも参加するのだと思う。


「そうみたいだね。みんなの思い出がいっぱい詰まった遊園地だから潰れないでいてほしいけどね」


そして一言付けたしておく


「たくさん人が集まるだろうけど閉園ライブ頑張ってね!」


すると次の瞬間少し暗い顔をした。

しかしすぐに表情を戻し、「頑張ります!」とだけ言って走り去っていった。

俺はそれに少し引っかかったが、遅刻しそうなことに気付いて慌てて教室に向かった。

須藤はもちろん遅刻したのだった。

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