第33話 遊園地(前編)
電車で10分の場所に遊園地はあった。
まだ開園まで時間はあるのだが、そこにはすごい人がおり、長蛇の列を作っていた。
「すごいな・・・休日だから人は多いと思っていたけどまさかここまで混んでるなんてな」
「きっと潰れる前に、皆遊びに来たんだね」
「こんなに人来るんなら、つぶさなくてもいいじゃん!」
やっぱりみんな遊園地は潰れてほしくないみたいだ。
なかには遊園地の壁に、閉園反対のポスターが貼られていた。
俺は改めて、この遊園地を存続させたいと強く思った。
そんなことを考えていると、開園の時間になったのが皆の足が動き出した。
「こんなに人がいるんなら、そんなにアトラクション乗れないかもな」
「迫力あるの乗りたい!」
由愛はどうやらスリルを楽しみたいようだ。
「私はロマンチックなのがいいかな」
里奈はにロマンチックか・・・想像できないな。
俺たちは入園料として、それぞれ5000円払い中に入った。
5000円払えば、アトラクションは乗り放題なので乗れば乗るほどお得なのだが、今日はそれが無理みたいだ。
まだ開園したばかりだというのに、それぞれのアトラクションの前には、それに乗るべく長蛇の列ができていた。
すると由愛はいきなり絶叫マシーンを指差し、あれに乗りたい!とはしゃいでいた。
俺はそれを見ると、乗り物が空高くまでゆっくり上がっていって、頂上まで行くと一気に下まで落ちるという乗り物だった。
いきなりこんなの乗るのかと思いきや、ただでさえすごい人が並んでいるのに、俺達より後から入ってきた人達によって、さらにその列は長さを増していく。
どうやら皆も、落ちる絶叫を味わいたいようだ。
これだと待ち時間は長いだろうから、乗りたいと思ったやつは迷わずに行った方がいいだろう。
「よし!並ぶか!」
すると由愛は、やったーと喜んでいた。
「へー、あれに乗るのねー」
里奈はその乗り物を見て顔が青ざめていた。
「里奈はやめておくか?無理して乗ってもしんどいだろうし」
俺は無理に付き合わなくてもいいことを言うと、里奈はむきになった。
「はぁ~?このあたしがあんなの怖いと思うわけないじゃん!」
里奈は乗る気だった。
「無理はするなよ」
「大丈夫よ!」
3人で乗ることになった俺たちはその行列を並ぶこと30分以上、やっと乗る順番が回ってきた。
上に上がって落ちるだけなので客の回転は速いのだが、何せ並んでる人が多いため結構待たないといけなかった。
昔来たときは、並んでも数分だった記憶があるが、それほど今日は人が多いという事か。
その乗り物は4人用の座席が四方についており、最大16人乗れるようになっていた。
4人用の座席に、俺は2人に挟まれるように座り、端の1席は空席となった。
そしてそろそろマシーンが動くのだろう、安全バーが降りてきた。
まだかまだかと待っていたら、マシーンが動き出した。
ゆっくりを上に上がっていく。
それに伴い、ここら辺一帯が見渡せるほどの高さまでになった。
すると里奈が、俺の手を握ってきた。
「あんた、怖いでしょうから手を握っててあげるわよ!」
俺はスベスベな里奈の手に少し興奮してしまい里奈の方を向くと、目をつぶり歯を食いしばっていた。
そんな無理して乗らなくてもいいのに。
そう思っていたら、落下が始まった。
「わああああ~」と皆の悲鳴が聞こえる。
里奈は、歯を食いしばり耐えていたが我慢できなかったのか俺の手を、自分の胸元に引っ張り抱きかかえてしまった。
その際、里奈は胸元が開いている服を着ていたので、生のふくらみに手が押しつぶされた。
そこはすべすべしていて生暖かい、この世のものとは思えない触り心地であった。
俺は1人だけ違う叫び声をあげるのであった。
「おほおおおおお!」
この感覚、しばらく味わっていたいと思ったが、俺の願いは叶えられることはなかった。
乗り物はあっという間に下に行き、終わりを迎えたのだ。
まだ味わっていたいこの気持ち。
俺は名残惜しく、里奈に気付かれないように胸の間から手を引き抜き、何事もなかったかのようにふるまう。
このこと里奈が気付いたら、大変だろうからな。
気付かれないようにするのが1番なのである。
俺は由愛の方を見ると、「わ~楽しかった!」と上機嫌だった。
そして里奈はまだ恐怖から解放されないのか、顔色が悪かった。
「里奈、大丈夫か!少し休もう!」
里奈は「大丈夫よ!」と強がっているが、今にも倒れそうだった。
俺は、里奈を支えながら近くのベンチに向かい、少し休むことにした。
「2人ともちょっと待ってて、ジュース買って来る!」
俺は自販機に向かい、ジュースを選ぶ。
「遊園地の自動販売機無駄にたけえ・・・」
客の足元を見ているな。
外の自販機よりも1.5倍増しの値段となっていた。
俺は、買うかどうか悩んだが、里奈があの状態だから買うしかないかと諦め、俺はジュースを買う。
そして、買って2人の元に戻ってきた俺は、由愛と里奈の背後から首に冷たい缶を押し当てる。
「ひゃっ!」
「きゃっ!」
2人ともびっくりしたようだ。
それに満足した俺は声をかける。
「ほら2人とも、ジュースでも飲んで落ち着きなよ!」
「もうカズ兄!びっくりするでしょ!」
「何すんのよ!」
里奈はもう落ち着いたみたいだ。
良かった。
まだまだ1日はこれからなのだから!
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