第32話 遊園地行く前に疲れました

俺は体に重さを感じて目を覚ます。

体が動かない。

呼吸も思い通りにできない。

これに近い感覚に陥ったことは過去に何回かある。

これはいわゆる金縛りというやつだ。

俺は恐る恐る目を開ける。

俺はどうやら仰向けで寝ているようだ。

意識が朦朧としている。

体に感じる重さがとても苦しい。

金縛りってなんでいつもこう苦痛なのだろうか。

せっかくの睡眠が最悪なものとなる。


しかし今日はいつもと違う感覚に陥る。

金縛りは苦痛なのだが、体を拘束するものがとても柔らかく心地良いのだ。

今まで金縛りで、こんなに心地よさを感じたことはなかった。

俺は唯一自由に動く眼球と、頑張れば少し首が動いたので、体に異常がないことを確かめるべく体に目を移すと、布団には何やら膨らみがあった。

俺はその正体を確かめるべく、しびれて重く感じる腕を動かし恐る恐る布団をめくると、なんとそこのは俺に抱きつく様にして、由愛が心地よく寝ていた。


なんでこいつここで寝てるんだ・・・。

俺は由愛を起こすことにした。


「おい!由愛!起きろよ」


「う~ん・・・あと5分」


由愛はそう言うと、少し体を動かす。

その際、俺のお腹付近で2つの柔らかい膨らみが揺れ動く。


「なっ!」


由愛も中学3年生だ。

成長するところは成長している。

その成長した胸のふくらみが俺のお腹の上で心地よさを与える。


「おい!由愛なんで俺のベッドで寝てるんだよ!」


俺は急いで由愛を起こすため、体をゆすりながら声をかける。

すると由愛は目覚めたようで、まだ眠そうな瞳を開け、俺の顔を見て口を開く。


「だって、遊園地楽しみでなかなか寝れないから、カズ兄もそうかなって思って見に来たら、1人だけぐっすり寝てたんだもん。」


「だからって俺の布団にもぐりこんだのか?」


「妹を置いて1人だけ寝るってずるくない?起こそうとしても起きなくて、そしたら眠くなってきたから、もうここで寝ちゃえって!」


どうやら妹は眠くなったらどこででも寝るらしい。


「駄目だぞ由愛!いくら眠くっても自分の部屋に戻って寝ないと!」


そういうと由愛は俺の上で暴れ出した。


「えーっ、別にいいじゃん!家族なんだから!!」


そこで由愛は異変に気付いた。


「あれ?カズ兄・・・」


次の瞬間妹は何かに気付いたようで、ニヤっと笑う。


「なんだよ?」


「なんかお腹に当たってるよ?」


「やめい!」


俺は由愛を体から降ろす。


「もうちょっと~」


なぜか由愛は俺の体に乗ろうとしてくる。


「もう起きないと、里奈が来る時間になるぞ!」


それを聞いた由愛は、そういえばと思い出したかのように布団から出ていく。


「カズ兄!早く朝食食べて、行く支度しよう!」


由愛はそう言うと、部屋から出て自分の部屋に戻っていった。

おそらく着替えて、朝ごはんの準備をするのだろう。


「朝から疲れたな・・・」


朝から起きたことを思い出し俺はぐったりする。




***************************************************

朝食を食べ、待ち合わせまで時間があるため、スマホを操作し待っているとチャイムが鳴った。


「お!来たか!!」


「待ちくたびれたよ・・・」


「さぁ行くぞ!」


俺はそう言うと玄関に向かい扉を開ける。


「おはよう里奈!由愛ももう少ししたら来ると思うからちょっと待っててくれ」


俺は里奈に声をかけ姿を目に入れると、固まってしまった。

里奈は、胸元が開いている白いタートルネックとヒラヒラしたベージュの少し短めのスカートをはいていた。

すると里奈は頬を赤く染めて話しかけてくる。


「いいわよ別に。まだ開園まで時間あるし」


里奈はそう言うと腕を胸で組んだ。

その瞬間、胸が揺れ服からこぼれ落ちそうになる。

俺は、もうそこから目が離せなくなった。

里奈は普段からこんな露出の高い服を着ているのだろうか。

コスプレをしてるときは露出が高めの服を着てるのは知っていたが、それに慣れ過ぎて普段着でも着ているのかもしれない。

さぞ周りの男の目線は胸元に向くことだろう。

すると里奈は俺の目線に気付いたのか、胸元を手で隠してきた。


「ちょっとどこ見てるのよ!」


「ごめん・・・男として目が離せなかった」


俺は申し訳なさそうに謝る。


「エッチ・・・」


そんな服を着ている方がエッチな気がするが俺は里奈の機嫌を損なわないためにも、その言葉は飲み込んでおくことにした。

すると妹の足音が近づいてきた。


「おまたせ~早く行こ行こ!」


そう言って俺の横に来た由愛は里奈の姿を見て目を見開く。


「ちょっと里奈さん!なんて格好してるの!!」


由愛は少し怒っている感じでもあった。


「え?何が?」


「その格好よ!格好!」


「かわいいでしょ!今日のために昨日新調してきたんだー」


里奈はそう言うと、腰に手を当て胸を張りかわいい自分を見てとアピールしてくる。


「その服でお兄ちゃん落とそうって魂胆だね!そんなの駄目だよ!!」


里奈は思惑がバレたと言わんばかりに、顔を引くつかせた。

すると里奈は、今日和樹に見てもらうために買った服であることをごまかすことにした。


「そんなことしようとしてないわよ!こんな服誰の前でも着るわよ!」


すると由愛は1歩後ずさり叫んだ。


「痴女だ!痴女が出たぞ~!!」


由愛の叫び声は、この町の隅々まで響き渡った事だろう。


「あっ!ちょっと由愛ちゃん何叫んでるの!恥ずかしいでしょ!!」


里奈はそう言うと由愛の口を手でふさぎ黙らせようとしている。

どうやら今日は、長い1日になりそうだ。

俺は2人が落ち着くまでその様子を見守るのだった。

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