第12話 ワールドキングの正体

指定された場所まで20分ほど歩いた。

着いた場所は広めの土地で、半分古ぼけた倉庫となっており、残り半分は少しだけ荒れている場所だった。


指定されている場所はこの倉庫の中だ。

周りはさっきの場所とは違い、人の気配がないほどに静まり返っていた。

倉庫の扉は空いるのでそこから中に入ればいいが、いざというときは助けが呼べないだろう。

そんな中、私は覚悟を決め倉庫の中に入った。

この倉庫はもう使われていないのだろう。

倉庫の中は広々としており、四方の壁に大きなモニターが4台取り付けられていた。

この倉庫が使われていた時は、そのモニター画面に情報が表示されていたりしたのだろうか。

そんなことを考えながら奥に進んでいくと、倉庫の中に反響して声が聞こえる。


「ようこそ!」


声をした方に目を向けると、薄暗い倉庫の奥から1人の男が現れた。

身長は180センチほ程と高く、年齢は40代だろうか、髪はシルバーに染めており、眼鏡をかけている。


「あなたがワールドキングですか?」


すると男はうなずいた。


「そうです。私こそがワールドキングです。リーナさん。いえ、佐藤利奈さんと言えばいいですかね」


男は薄気味悪く笑った。


「なんで私の個人情報を知ってるの!?」


男はにやけたままだ。


「ツブッターに上げた写真には、個人情報になるようなものは映ってないはずなのに!」


男はふっふっと笑った。


「確かにあなたのツブッターには、個人情報らしきものは映っていませんよ。まぁ、強いて言えばあなたの顔と体が私のタイプだったので、それも個人情報と言えるでしょうけど」


佐藤は後ずさった。


(なにこいつ・・・キモすぎる)


「おっと逃げれませんよ!」


ワールドキングがそういうと、倉庫の入口の方からガラの悪い5人組の男が入ってきて、逃げれないように取り囲んできた。


「なっ!」


いざとなれば逃げようと思っていたのに退路を断たれた。


「私をどうする気?」


恐る恐る聞いてみた。

男はよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに、笑顔で両手を広げながら言った。


「おめでとうございます!あなたは私のお嫁さんになれることが決定しました!」


「・・・・はっ?」


「私にもそろそろ世継ぎが必要ですし、何よりこの才能あふれる私の血筋を絶やすわけにはいきません」


何言ってるのだろうこの人。


「そんなの嫌に決まってるでしょ!」


すると、彼はの後ろのモニターが付き、そこには和樹が写った写真が出てきた。


「なにを?」


彼はニヤケながら言う


「あなたがもし従わなかったら、彼の命はないものと思いなさい」


「そんなこと出来るわけないでしょ!もし彼に何かあったら日本の警察が黙ってないわよ!」


「それができてしまうんですよね!この世界には金さえ積めば叶えられないことはないんですよ」


そこで後ろに取り囲んでる5人のうち真ん中のリーダーらしき人がしゃべる。


「それにしてもお前も不幸だな。天下のツブッターさまの社員に狙われるなんてな!」


「なっ!」


ツブッターの社員?


「あいつは、ツブッターの情報を管理してる部署の課長らしいぜ」


「ツブッターに登録している個人情報を抜き放題ってな」


だから、私の個人情報がばれたのか。


「彼に協力すると、俺たちもツブッターに登録してるかわいい子の個人情報を教えてくれるって寸法よ」


なんて奴なのだろうか。

管理する側が、その情報を漏洩するなんて!


「あなた達、しゃべりすぎですよ!さぁ、観念しなさい。これから私の家で生活するのですから」


そういい近づいてきて手首を握られる。


「さぁ、これから私の車で向かいましょ」


「いや!」


「これから私たちの明るい未来が待ってるのですよ!」


「いや~~~!」


すると男に顔を叩かれた。


「うるさいですね。少し黙りなさい。帰ったら教育が必要なようですね!」


手首を握られる力が少し強くなった。


「さぁ、来るのです!」


手をグイっと引っ張られる。

その時私はあきらめた。

抵抗する力が弱まり、手が引かれる方に動き出す。

しかし、和樹を守ることはできた。


(私の分まで幸せになりなさいよ・・・和樹!)


倉庫の入口が近づいてくる。

私の人生は終わった・・・。

そう思い瞳から涙がこぼれ落ちる。

その時、声が聞こえた。

女の子のかわいい声だ。


≪ハッキング終了しました≫


皆の動きが止まった。

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