第三十四話 サザレさんは雨にぬれず
こんなものかと。達成感で満たされるとか、
しかし、これにはどうにも納得のいくものではなかった。あの
「いやあああああ! お父さん! お父さん!」
「あなた! あなた!」
太門の妻と
「きゃあああああ!」
「マジか!」
「あいつ、やりやがったぞ!」
「見るな! みんな見るな!」
家族連れの夫婦や子どもたち、それに、ちょうどフードコートに来ていた私の同級生であるホシケンたちも
「これってマジでヤバくね?」
「ヤバい! ヤバい!」
後にホシケンの
しかし、こういったことも
自分がこんなにも
コイツらの理解なんかよりも、もっと、ずっと喜ばなければならないのだと!
「あぁっはははははあああ!」
青柱が笑えばフードコートは
「きゃぁぁあああああ!」
「ヤベえ、マジであいつヤベえ……」
「みんな
それもそうだろう。たった今、人を殺したばかりのネバーウェアが
青柱は笑った!
しかし、笑えば笑うほど気持ちが空回りするようになり、逆に満たされない気持ちで
「うぁっはははははあああああ!」
必死に笑い飛ばそうとした青柱であったが、
なんでだ? どうして俺はこんなにも満たされていないんだ?
なんでだ? ひょっとして俺は光合成人間だから、明るい未来なんてとっくの昔になくなっていたのか? 俺の人生なんかとっくに終わっちまっていたのか?
くっそお! くっそぉおおお! 何も面白くなんかねえ!
おのれ! おのれぇえ!
青柱は
「そこにいるネバーウェアに告ぐ! 君たちは包囲されている! あきらめて、おとなしく投降しなさい!」
「お客様! ここから
モールのスタッフや警備員も集まって、やっとのこと避難の
「お客様! 冷静にお願いします!」
「危険ですから、
警官隊は青柱を取り囲んで、
「おのれ! おのれ! おのれぇえ!」
「ぐほぉぅ!」
「な、なんだ? これは!」
「どうした! 何がおきているんだ!」
「わかりません!」
「ATP能力か? くそ! 仕方がない!
スライム班がやむを得ず発射するも、重力のせいでスライムが
「アヒャヒャヒャヒャヒャァア!」
盾班が複数名で
「ダメだ! スライムがきかねえ!」
「コイツ、市民プールにいたヤツじゃねえのか?」
「負傷者発生! 至急救護求む!」
二人のATP能力保持者の前に警官たちがなすすべがないように思われたその時だった!
「
この声を聞いた
「ヤッベえ! アイツを知ってるぞ! 無敵のUOKwじゃねえか! あんなヤツが出てきちまったらかなわねえ! 早く
超撥水男はサザレさんを見るやいなやきびすを返し、
「オラァ! ジャマだ! どけ! どけ!」
超撥水男は次々と警官隊を
フードコート一階では、サザレさんがゆっくりと青柱との
「青柱! 貴様! よくもやってくれたな!
サザレさんは間合いを探るように、用心深いフットワークで
青柱は自分の能力に絶対的な自信を持っていたが、サザレさん相手にどこまでやれるのかは別問題だった。サザレさんは別格なのである。実際に敵として相対することになった青柱は、その
「くっそ、ヤベえ。
青柱はさらにズシンと重力を強めた。しかし、サザレさんは
「ヤベえ……、きいてねえぞ。マジか。やっぱモールの中じゃ光合成が足りてねえのか?」
サザレさんは青柱の能力を
それは水面を
青柱の左側からワンツーパンチで接近すると、
「ぐぁあっ!」
なんとうい重いローキックだろうか!
この重力のオン・オフは、光成とたたかった時もそうだったが、サザレさん相手でも有効なようである。
しかし、青柱にとっては、それよりも自身の重力がまったくきいていないことに大変な
青柱は訓練して筋力だけでなく光合成パワーも強化していた。この重力の中、青柱が自由に行動できるようになったのは、人並み外れに強化した光合成パワーのたまものなのである。先ほど
サザレさんの
つまり、サザレさんはATP能力の有り無しなど関係がないほどシンプルに強いのだ。その単純で
青柱は逃走経路を探してあたりを
「くっそお! 人をバカにしたような顔しやがって! ふざけてんじゃねえぞ!」
ステンドグラスから差し
「待て! 青柱!
青柱を追ってサザレさんもジャンプした! しかし、先に二階へ着地した青柱が重力を発動させたため、空中から
吹き抜け二階で日の光を浴びた青柱は、
赤い妖精のステンドグラスは、粉々に
誰がいったか、サザレさんにはATP能力などないという。
ただ単に光合成量が異様に多いだけないのだと。確かにサザレさんの光合成は人並み外れた
光合成人間というものは、光合成量が多ければ多いほどより素早くパワフルに動くことができる。服を着ているよりも
これは
こんなエピソードがある。ある晴れた日だった。サザレさんがちょっとした用事で事務所から出かけていった時のことである。サザレさんは晴れていたから
なんと、サザレさんは、降ってくる雨の
直下にいたサザレさんは、まるで時間を止めたような冷静さでもって一欠片、一欠片を目視し、その一切をかわして、かすり傷一つ負わずに
天窓の外はショッピングモールの屋上だった。
雲の一つもない、目がくらむほどまぶしい青々とした大空。
そこは
「青柱!
「追ってきやがったか! くっそぉおお!」
先ほどのフードコートとは
「うぉぉおおおおおおお!」
青柱が
ドスゥン!
青柱が最高最強の重力を一気に発動させた!
予想以上の重力だった! 周辺の車がつぶれ始める! これにはさすがのサザレさんも思わず片ヒザをついた!
「こ、これは! 見事だぞ!
「うるせえ! うるせえ! うるせえ! いまさら何いってんだ! おせえんだよ! いまさらおせえんだよ! ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう!」
青柱はさらに重力を強めようとする! この
「青柱! 観念しろ!」
青柱はたまらず両ヒザを地面についた!
「くっそぉぉおおお! 歯が立たねえ! まったく歯が立たねえ! これが
サザレさんが目の前まで来た時には、
青柱はこの
「うぁぁあああああああ!」
青柱が重力を解除する! しかし、サザレさんの方でもこれを予測していた! 同じてつはふまない! 雲一つない
「うぁあああ! やられる!」
我を忘れた青柱は、
その時不思議なことが起こった。
サザレさんが
青柱が素早く立ち上がったところへ、サザレさんは
「なんだ? これは? 何が起きてるんだ?
一体何が起きているのだろうか。青柱の体がサザレさんの攻撃に対して、まるで磁石のように反発しあっているようなのだ。
磁石というものは、N極とS極というように
アイザック・ニュートンはリンゴが木から落ちる様子を見て、地球とリンゴが引き合う万有引力の法則を発見した。青柱の使う重力とは、つまりニュートンの発見した万有引力であって、いい方を少しかえてみれば、青柱のATP能力は「引力」を強める能力ともいえるのだ。これが、極限まで追い
つまり、「引力」を強めるのではなく、
サザレさんが次々と
「うぁぁあああああああ!」
見上げれば雲一つないまぶしいほどの晴天だ!
我を忘れた青柱はガードもせず
「うぉぉおおおおおおお!」
そして、何度も何度もサザレさんを
「この
なんということだ! あの無敵だったサザレさんが敗れてしまったのだ!
買い物客たちはすでに
「はあ、はあ、はあ、はあ……」
我を忘れて
「ヤベえ……、なんだこの
青柱は笑いだそうとして片ヒザをついた。
「あぶねえ……、気を失いそうだ。けどよう、ヤベえ、ちょいと
ちょうどそこへ警察たちが屋上に上がって来た。
「おい! あそこだ! いたぞ!」
「おい、ちょっと待て?
「あそこに
「ウソだろ……」
「サザレさんがやられちまったのか?」
「ま、マジで?」
「
何名かが遠巻きに
ドスゥン!
疲れていたとはいえ、
「はあ、はあ、はあ、はあ……。テメェらみてえな虫けらが、この
「くっそお! ダメだ! 近づけねえ!」
「これ以上は危険だ!
「はあ、はあ、はあ……、増援なんか
そう考えた
こうしてショッピングモールで起きたネバーウェアによる大事件は幕を閉じた。この事件はニュースで全国的に報道され、二名の
当局からの公式発表では、
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