ソーシャルメディアの生存関係——Twitter、Instagram、TikTok③
一方、TikTokは2016年の9月に中国ByteDance社によって「抖音(Douyin)」という名前でサービスが開始され、翌年5月に「TikTok」に改称され海外展開された。殊に国内では2017年にノミネートされた「インスタ映え」に続く形で2018年の新語・流行語大賞に「TikTok」がノミネートされており、2018年前後より若者を中心に積極的に利用されている。TikTokは最大60秒という短い動画と、用意されたリスト上のBGM、そして撮影した動画に対して編集を加えることによって独特のコンテンツを作成できる。TikTokは動画というコンテンツを作成するという点において、前節で紹介したTwitterと比べ一つのコンテンツに対して包含される情報量は格段と高いが、それゆえに一つのコンテンツあたりのユーザーの労力も多い。投稿されるコンテンツのバリエーションは広く、高校生のダンスから有名人のオフショット、あるいは癒される動物の映像など多岐に渡っている。TikTokは先だって登場したTwitterやInstagramの影響を受けながら、一方で影響を与えてもいる。TikTokの基本的な構造は後述するInstagram上で2018年に実装された「ストーリー機能」に近く、影響関係が想定される。「ストーリー機能」は従来のタイムラインとは別に、15秒制限の非常に短い動画を投稿することが可能な機能だ。本機能は24時間後に自動的に消去される点がTikTokとの大きな差だが、基本的なシステムはTikTokに近く、共に短い動画に対しスタンプや文字を張り付けることによって「映える」動画へと加工し、投稿を行う機能だ。
TikTokが「動画ベース」である点に注目すれば、そのサービスは前節で触れた各種動画投稿サイトと比較されるべきだろう。TikTok特有の短い時間制限は、動画視聴者が一つの動画コンテンツに長時間居座ることなく、短時間で次々と視聴することを可能にしている。加えて、短い時間制限を設けることによって、テキストベースのTwitterと比較して増加した動画投稿者の編集上の負担を軽減し、投稿者は莫大な量のコンテンツを次々と提供することを可能にしている。加えて、TikTokはタイムラインに投稿する前に動画を編集する機能がデフォルトで実装されており、この機能によって従来はAdobe Premiereなどのソーシャルメディア外部のソフトを利用せずとも、アプリケーション内で完結させてコンテンツを投稿することが可能になっている。このように、視聴者によるコンテンツの消費と投稿者によるコンテンツの供給が非常に速いペースで延々と繰り返される構造が、TikTokの大きな特徴だ。
上記の構造的特徴の上で、TikTokでは音楽に合わせて口パクしたり、踊ったりといったパフォーマンスを繰り広げるという、特有の遊び方が生じてきた[10]。このような身体的パフォーマンスによって作成される動画というのは、前節で扱ったTwitter上では存在しなかったTikTokにおいての特徴的なコンテンツだ。音声に合わせて投稿者が身振り手振り、或いはダンスをし、それを編集することで「映える」動画を作成するという文化はTikTokのアプリケーション設計の優秀さゆえだが、一方で「音楽に合わせてパフォーマンスをする動画コンテンツ」としては、殊に日本国内では動画投稿サイト「ニコニコ動画」における「踊ってみた」動画が参照できる。2010年代中盤までYouTubeとともに存在感を維持していた動画投稿サイトである「ニコニコ動画」は、前節で述べた2ちゃんねるにおいて特徴的だったコンテンツシェアの思想を継承しており、歌声合成ソフトであるVOCALOIDを使用した楽曲群に対する二次創作をベースに多様なコンテンツが生成される特殊な文化圏が形成された[11]。上述した「踊ってみた動画」も、この巨大な文化圏を構成するコンテンツの一部だ。「踊ってみた動画」は主に上述のVOCALOIDを使用したオリジナル楽曲に合わせ投稿者が実際にパフォーマンスを披露するものであり、その構造は一見するとTikTokにおいて特有の大量に消費されていく動画群と共通項を見いだすことができる。
その一方、「踊ってみた」動画とTikTokの動画は投稿者の「顔」という点で大きな違いがある。ニコニコ動画において投稿されている動画の多くは、投稿者がマスクやサングラスをすることによって自身の顔を意図的に隠していることが多い。下図はニコニコ動画における「踊ってみた動画」の中でも最初期に投稿された動画のスクリーンショットであるが、ダンスを踊る投稿者はサングラスをかけており、自身の顔を明確に映してはいないことが確認できる。その一方、図1にあったように、TikTok上で投稿される動画の多くので投稿者は躊躇がなく顔出ししており、この点で両者のソーシャルメディア上で展開されたユーザーの文化には大きな差が見られる。では、この差には一体どのような背景があるのだろうか。これについて、本稿では2010年よりサービスを開始しているソーシャルメディアであるInstagramにおける「自撮り」の文化を参照してみたい。
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