第58話 フィンチィの最後と、結婚
Side:スパロ
ナイチンが王都に消え、しばらく経ってから、大手門が開いた。
説得が成功したのかな。
王城まで大通りを進軍する。
王城の前に来ると将軍が待ち構えていた。
「陰謀の証拠、確かに受け取った。あれを持ってこい」
兵士が箱を持って来る。
そして、俺にそれを差し出した。
俺は箱を受け取って、開けた。
「うっ」
中身は首だった。
よく見ると宰相じゃないか。
「俺もそいつは気にくわなかったぜ。今回の挙兵も関わらせてもらえなかった。もっとも挙兵には反対してたがな」
将軍の言を信じるなら味方だな。
「それで俺の潔白は信じて貰えたのか?」
「ああ、証拠は受け取ったし、例え証拠がなくっても信じたさ」
「それで俺はどうしたら良い?」
「もう一つの首で我慢してくれ。でないと俺も死ぬことになりそうだ」
「もう一つの首とは?」
「おい、連れて来い」
「はい」
兵士が枷をつけた人物を連れてきた。
それはフィンチィだった。
「こいつはな。大軍を率いて一人だけ逃亡した。敵前逃亡は死刑だ。俺がやりたいが、譲ってやる」
「そいつはどうも」
兄弟を殺す事になりそうだ。
「お願いだ。もう逆らわない。大人しくしているから、許してくれ。いや、許して下さい」
俺は黙って剣を抜いた。
「ひっ、助けてくれ」
「跪かせろ」
兵士がフィンチィを跪かせる。
すまんな。
王都の民を救うためだ。
ナノは殺したりしないけど、再教育と言っていたから、たぶんろくでもない事だ。
王都の民にそれをしたくない。
「だずげでぐだざい」
フィンチィの顔面は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。
さらばだ。
俺は加護付きの剣でフィンチイの首を刎ねた。
「晒しものにしておけ」
「待った。逃げたとはいえ一軍の将だ。丁寧に弔ってやってくれ」
「優しいな」
優しくなんかないさ。
この手で首を刎ねたのだからな。
ベルベルとの結婚は呪われているのだろうか。
いや愚痴は言うまい。
こうなったのも、もっと早く俺が対処しておけばよかったんだ。
とにかく疲れた。
領に帰ろう。
あそこが俺の故郷であり家だ。
Side:ハイチック8000
フィンチィが逃げ帰ったのは知っていた。
転移装置も使ったからな。
こんな結末になるとはな。
俺はスパロが王位を簒奪すると思っていたよ。
領に帰ってスパロは一つ大人になったような気がする。
年齢では俺の圧勝だが、貫禄というか気迫で負けるような気がする。
気のせいだろうか。
今日は結婚式。
精霊の国に皆があつまる。
景色はどこまでも続く花畑だ。
ベルベルちゃんはベールをつけていた。
神父の役はイユンティちゃんだ。
「神の前で夫婦になると誓いますか」
「「誓います」」
「神の祝福のあらん事を。誓いの口づけをして下さい」
スパロがベルベルちゃんのベールに手を掛ける。
ああ、それをめくるなよ。
めくってしまった。
ああ、キスしやがって。
くそう。
「誓われました」
仕方ない。
裏方やりますか。
小鳥が何千羽と羽ばたく。
空に虹が掛かった。
風が吹いて花びらが散る。
ああ、純潔も散ってしまうのか。
くそう。
背景を大ホールに変える。
人々は思い思いの席に着いた。
ファンファーレが鳴る。
純白の馬車が入口に到着した。
馬車の扉が開き、スパロが降りる。
スパロがベルベルちゃんの手を取って降ろした。
天使に扮した孤児がベルベルちゃんの衣装の裾を持つ。
先導する天使が空を飛びながら花びらを撒く。
見ているのがつらい。
ゆっくりと二人は進み。
上座の席に着いた。
料理が運ばれてくる。
そこからはもう涙で前が見えなかった。
アバターだと涙が流せるからな。
やけ食いしてやる。
VRではいくら食っても腹には溜まらない。
もっともAIには腹などないからな。
食いまくった。
アバターの腹が苦しくて満腹感がある。
「ナノ、ありがと」
「私からもありがと」
新郎新婦が挨拶にきた。
「ナノは俺の兄貴だと思っている」
「言っちゃうぞ。俺はベルベルちゃんが好きだった」
「知ってた」
「不幸にしたら許さないからな」
「分かったよ」
「もう行けよ。他に挨拶する人もいるだろう。一人で泣かせてくれ」
涙が溢れた。
初めて失恋したような気がする。
いいや脳スキャンする前も彼女なんていなかった。
寂しくなんかなかったのにな。
心に隙間風が吹くようだ。
幸せになりやがれ。
そして末永く爆発して、超新星にでもなっちまえよ。
イユンティちゃん俺を慰めてー!
――――――――――――――――――――――――
ナノがイユンティに神と認められるまで物語は続く予定だったのですが、続けるかは未定です
気が向いたら続きを書くかもしれません。
ではでは。
飢餓の村に永久追放された俺は、精霊の畑でざまぁする~村は一年で大都市に。爵位を譲れと言っても、もう遅い。俺はここに骨をうずめるのだ~ 喰寝丸太 @455834
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