第57話 謀反と、進軍

Side:スパロ


 謀反の恐れありとして国から査問会に出席しろとのお達しが来た。

 どうして、ベルベルと結婚しようとすると、問題が起きるんだ。

 誰かが呪いでも掛けているのか。

 聖女様にお祓いしてもらおうかな。

 今はそんなことをしている暇はない。

 国の使者になんて返答しよう。

 出席すると言ったら投獄されて死ぬ未来しか見えない。

 戦ったら、ナノがいる限り負けないのは分かっている。

 でも余分な血が流れる。

 そんなのは本意じゃない。

 身の潔白を信じて欲しいだけだ。


「ベルベルどうしよう?」


 使者を別室に待たせてベルベルに尋ねた。


「戦いましょう。この国は腐ってます。膿は出さないといつまでも傷は治りません」

「分かった戦おう。ナノ、出来るだけ死人を出さない方法でお願い」

『分かったよ』


 使者に決意を伝えることにした。


「査問会の件は承服しかねる」

「では王国に弓引くおつもりですか」

「潔白を信じて貰えないなら」

「では帰ってそのように伝えます」


 ナノの操るゴーレムが何万体と集結した。

 見渡す限りゴーレムだ。


「じゃあ、行って来る」

「待って」


 ベルベルが呼び止める。

 そして振り向いた俺にキスをした。


「無事に帰ってこられるように、おまじない♡」


 俺は後ろ髪を引かれる思いで館を後にした。


「出陣!」


 ゴーレム達が一斉に片手を挙げて応えてくれた。


『ちゃっちゃと片付けよう』


 俺は8本足の馬ゴーレムに跨った。

 剣を抜き、掲げて走り出す。


『ベルベルちゃんが見てるからと言って恰好つけやがって』


 馬を走らせること半時、平原で大軍に対峙した。


「全軍突撃!」

『しないよ』


 俺はずっこけた。

 馬から落ちそうになって慌てて手綱を握る。


 空が影った。

 魚みたいなあの星々を移動できるという船が現れた。


『パラライズビームからのアブダクションビーム』


 敵軍の兵士が魚の形の船に次々に吸い込まれていく。


「死んでないだろうな」

『気絶または痺れているだけ。船の中で再教育するさ』


 あっけなく戦闘は終わった。

 ゴーレムの大群は何の為に必要だったんだ。


「ねぇ」

『ゴーレムの意味はって言うんだろ。これから王都に進軍するためだ』

「そうだね。膿は出し切らないと。進軍!」


 とほほ、逆賊の汚名を着ることになりそうだ。

 簒奪王とか呼ばれるのだろうか。


Side:ハイチック8000


 くそっ、ベルベルちゃんとキスしやがって、うらやましいぞ。

 それにその格好つけは何だ。

 抜いた剣の意味は?


 これがもてる男か。

 見物人から英雄譚が語られるのだろうな。

 非業の死ルートは回避させてやるよ。

 帰ったら結婚しようと言わなかったから、死亡フラグは立ってないからな。


 戦闘?

 そんなものは鼻ほじだ。

 暴徒鎮圧で良いんだよね?


【その認識で問題ないです。24時間スパロはモニターされてますから、言いがかりだと言えます。外交案件ですが、現地協力者の身柄は守られねばなりません】


 さいですか。

 そう言うと思ったよ。


 ただのスパイでも見殺しにはしない。

 それが銀河連邦だものな。

 ただし、病気なんかの封鎖は非情をもってやる。

 犠牲者を少なくするためなんだろうけどね。

 スパイの身柄を助けるために敵の惑星を1個潰した事もあるくらいだ。


 ゴーレムの進軍は早かった。

 転移装置があるからね。

 一日で王都を取り囲んだ。


「王都の民よ、聞け! 我は無実の罪を着せられたティトマウス・スパロである! 国こそが反逆者である! 焼き払われたくなくば城門を開け!」


 もちろん、スパロの声は増幅してやった。

 城門は開かない。


 その時ナイチンことゲールが馬ゴーレムに乗って駆けてきた。

 何か必死に訴えている。

 手には書類が握られていた


 スパロがそれを確認する。


「フィンチィの陰謀の証拠だ。ナイチンはどうしたいんだ?」


 紙にゲールが走り書きをする。

 俺を使者にしてくれと書いてある。



「ナイチン、よろしく頼むぞ」


 スパロは頷くとナイチンを送り出した。


「使者が行く! 通用門を開けろ!」


 通用門が開いた。

 ゲールは手を上げてスパロに挨拶すると王都の中に入っていった。

 ゲール、死ぬかな。

 でも奴の事だから生き残るような気がする。

 帰ってきたら刑期を短縮してやろう。

 恩赦だ。


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