四話 無自覚な能力者
香花のご飯は相も変わらず、美味しかった。
本日の献立はヒシメに山菜の味噌汁、大皿にはネギやキャベツ……のような具材が入った野菜炒めに、ねぶらが小鉢であった。
ねぶらとはこの島独特の食べ物で、納豆のようなねばねば感がありながら葉野菜のため、シャキシャキとした食感も残している癖のある一品だ。臭みを消すために香花はよく煮込んで調味料をまぶし、提供する。
ちゃぶ台がなく、腰を痛めながらの食事だがそれを忘れさせるくらいのおいしさと満足感がそこにはあった。
ヒシメの取り合いで喧嘩する四八目とA、その取っ組み合いで香花の小鉢がひっくり返され、四八目は首を絞められ気絶。痛みが共有されているため、Aも気絶し分身は解除された。
今までと変わらない風景にナナは深く安堵していた。そうして、四八目が泡を吹きながら横たわっている時にナナは口を開いた。
「香花さんってどうしてあんなに強いんですか?」
「えっ?」
咄嗟の質問に驚いたのか、香花は持っていた味噌汁に口をつけるのをぴたりと止めた。「うーん」と悩む香花は、そのまま味噌汁を飲まず、床に置いた。
「どうしてって言われてもねぇ、まあ、修行……とかしたから、って感じかしら」
「なるほど、香花さんでもやっぱり修行をしたうえでの実力だったわけですね」
「そりゃあそうよ、私だって初めは敵兵一人も倒せないような、か弱い女の子よ。それを修行を重ねていくことで少しずつだけど強くなっていったのよ」
「修行って具体的にどんなことやったんですか?」
「うーん……そうねぇ……基礎的な筋トレと同じかしら。あとは『能力』向上のためにイメトレなんかもしたわね。私の場合、あんまり使い物にならないから根を詰めての修行はしてはいないけど……」
「能力?」
「あら、言ってなかったかしら。四八目があんな風に分身できるのもそういった能力を持っている証よ。この島に住む少数の人や地人が特別な力を持っているの。珈々や一奈もね」
「え! そ、そうだったんですか……」
初耳だった。珈々とはもう何か月も一緒に働いているがそんな様子は一切見たことがなかった。
「まあ、スタミナの消費が激しいからまず日常では使わないわね」
「そうなんですか……ちなみに香花さんの能力って?」
「その時が来たら教えるわ」
すごく気になる……。ただ香花が先程、実用性のない能力と言っていたため、すごい強力なものでもないのか、とナナはあまり期待しないことにした。
「私も早く……能力を目覚めさせたいです……」
「……あんたねぇ」
「……? 私……何か変なこと言っちゃいました?」
「……いえ、別に」
「?」
無論、香花はナナの能力が開花していることを知っていた。あの上半師との対決終盤に起こった巻き戻し現象はナナが起こしたものだ。あれだけ戦況を変えるような能力は香花でも見たことがなかった。
だが、強力な能力ほどその反動は強く、体力の消費が大きい。ナナもその反動に耐え切れず、能力を使ったあの後、すぐに意識を失い体調を崩していた。
生半可な状態であの能力を使えば、最悪身を滅ぼしてしまう可能性だってある。それを危険視した香花はナナに能力のことを伝えようとはしなかった。
「さ、喋ってばかりだとご飯が冷めちゃうわ。早いとこ片しちゃいましょ」
「は、はい。……四八目さん、起きないんですけど……ご飯大丈夫ですかね?」
「あいつの器を見なさい。ほぼ平らげているのを見計らって意識を失わせたのよ」
「あ、ほんとだ」
長い付き合いなだけあって香花は四八目の対処に長けていた。
まさかこれが香花さんの能力なんじゃ……。
そう考えたナナだったが、口に出すと自分の身も危ないと判断し、思考を停止させた。
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