九話 詰めるなよ

 四八目は少し期待していた。ナナと別れた後、戦地に戻ったら状況が好転して優勢になっているのではないかと。だが現実は深刻だった。状況はやや押され気味。珈々の顔からも余裕はだいぶ薄れていた。その状況を遠方から見た四八目は急いで戦場に足を踏み入れた。


「四八目、遅かったじゃない」


 珈々の話し方にいつもの伸びはなかった。


「ああ、わりい」


「それでナナちゃんは? 逃がしたの?」


「逃がした? バカ言っちゃあならねえ、言っただろ? 出て行ってもらったんだ」


「あらぁ、強く当たってまた演技してると思ったのにぃ?」


「俺は演技なんかしねえよ。全部が俺の意思だ。ナナを払ったのもな」


「カフェの前で門前払いしたのもぉ?」


「そうに決まってんだろ」


「……四八目ぇ、私に嘘は通らないのよぉ」


 敵を一人倒し、二人目に差し掛かった四八目の手がぴたりと止まった。


「嘘? なんのことだか……」


「あなたって嘘つくとき視線をよく逸らすのよねぇ。今も私の顔見てくれないしぃ」


「戦闘中だぞ? 当たり前だろ」


「戦ってる時でもちょくちょくこっちを伺うのよ、あなたぁ。まあ、そういうところナナちゃんに似ているかもねぇ」


「俺があのグズと? わからねえなぁ」


「本当にナナちゃんを追い返したの四八目ぇ?」


「何度も言わせんなよ、俺は――」


「ホントウに? 四八目ぇ」


 目の細い珈々が瞼を大きく開け四八目の顔を覗き込んだ。四八目は弱った表情で首を傾げつつ頭を搔いた。


「んぐ……ふぅ、やっぱり珈々には敵わねえなぁ」


 四八目は白状した。

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