四章
一話 紙切れに
眩い朝。鳥の囀りと日の光にナナは目を覚ました。
「んっ……」
時計がないこの部屋でナナは、日の角度で時間が分かるという奇妙な特技を習得していた。朝日が出てからそう経っていない。よし、まだ寝られる。眠気の襲撃にナナは抗うこともなく目を閉じた。
だが、違和感を覚える。自分がいつ布団に入ったのか、何故いつもと違う場所に布団が敷かれているのか、何故こんなにも唇が乾燥しているのか。脳裏にふと昨夜のことが過る。そうだ……私は昨日……香花さんと。あっ! 昨夜のことを思い出しナナは飛び起きた。自分がキス中に寝てしまった罪悪感がナナを襲った。
「香花さんは……! どこに!」
ナナは三百六十度すべてを見回した。だが、香花の姿はない。呆れて私から離れたのかな……。よからぬ想像がつい浮かんでしまう。だんだんと落ち着きがなくなっていく。冷静さを欠いていたナナは、ふと横にあった小さな紙切れに目がいく。ナナはそれに気が付くや、ぶっきらぼうに紙をつかみ覗いた。そこには短い文が書かれていた。
「……! こ、香花さん!」
ナナは文を読むとすぐさまに家を飛び出した。行先は銭湯とカフェの2つ。香花の行き先が書いてあったわけではないが、ナナが思いつく香花の居場所などそこしかなかった。だが、今のナナに待つという選択肢はなかった。待っていたってナナの元に香花は帰ってこない。直感がそういった。だからナナは跳ぶように駆け出した。決して速くはない足で。
『ナナ、今までありがとう。あなたの未来は私が守るから。』
紙切れにはそれだけが書かれていた。
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