九話 女王陛下
島の真ん中にある大きな城。真夜中だというのに警備の兵やらがゾロゾロと隈なく辺りを模索している。屋敷内はもちろん、塀から離れた数十メートル先までもが光で包まれていた。そんな落ち着きのない敷地内に奴はいた。
「陛下」
「ん、なんじゃ」
「日に日に反地人勢力が拡大しております。現地人たちにまだ被害は出ておりませぬが、一刻も早く人間たちと和解したほうが……」
「そち、家族は居るか?」
「へ……? 父と母が」
「そうか、そなたその家族が人間に殺されたとしても、まだ同じことを言えるかの?」
「な、何を! 第一、人間が私の家族を殺す必要など――」
「無い……などと申すのか? 理由ならある。奴らは因縁深い。身近な者一人殺されただけでもその加害者だけでなく親族、友人、恋人などすべてに殺意を向ける者もおる。ゆえにそれ以上もな。奴らの習性は我々にいつも牙をむいておるのじゃ」
「な、ならば尚のこと! 今すぐにでも止めたほうが……」
「もう遅いのじゃよ。人間どもを食うことなど三代前の先祖から始まったこと。王のわっちでも過ぎたときは戻せぬ。我が上半師家代々が人を生かしてはおけぬという習わしの元、生きてきた。わっちの身勝手でそれを変えることなどできんのじゃ」
「で、ですが……」
「もうそれ以上言うな。いくら即位してから日が浅く部下に甘いわっちでも限度がある。もう下がってよい」
「はっ……、本日も長らくのお勤めお疲れさまでした。では失礼します。……お休みなさいませ」
「うむ」
そうして静まり返った王室。護衛の兵が外に出たのち、女はパンパンと手を叩いた。
「陛下、いかがなさいました?」
誰もいなかった背後から突如と声がした。いつからか、その忍びは後ろにいた。
「おお、来たか。夜分遅くにすまぬな」
「いえ、これも忍びの務め。陛下を待たせるわけにはいきませぬ。それでご用件は?」
「先ほどの話……聞いておったか?」
「はい、陛下から傾聴禁止の合図がなかったため、いつものように会話は聴き及んでおります」
「ならば話が早い。今の兵士、そちが殺してこい。もちろん、死体の処理も頼むぞ」
「それはやはり、陛下に歯向かったことが原因で?」
「当然じゃ。わっちの周りにあんな人情深い奴を生かしてはおけぬ。問題を起こされる前に消したほうが世のためじゃ。いなくても数日で事は収まるじゃろうて」
「御意、では直ちに向かわせていただきます」
「うむ、頼んだぞ」
「はっ!」
忍びは短く答えると一瞬で姿を消した。また女は一人になった。
「人間などという害虫はこの島にいらぬ。わっち李々湖の代でやつらを片付けたとなれば類を見ない大きな成果になる。そうしてまた、我が島の統率は一気にこちらに傾くのじゃ」
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