六話 ドアは静かに開く

 左手で鼻を抑えていれば四八目と話せる程度にはなった。その間にも四八目はお構いなしに話しかけてくるものだからナナもこれには頭を抱えた。


「おめえ、まだ店にいたんだな! てっきり部外者だからもう帰ったとおもったのによぉ!」


 どう考えても楽しい話題ではないのに意気揚々と四八目は喋る。一体何がそんなに楽しいのか。


「四八目さんもこの集会のメンバーだったんですね」


「そうさ! 中でも俺は重役だからよぉ! 参加しねえわけにもいかねえんだ!」


 そういえば最初に集会を口にしたのは四八目だった。ならメンバーであるのは当たり前かとナナは察した。根本的にナナはこの集団が何の組織で何を目的として集まっているのか知らなかった。


 ただただ集まって皆でわいわいがやがや騒ぐことが目的ならば納得はいくが、それにしては異様である。よく目にするのはもちろん大暴れしている人たちだが、前述したように大人しく飲んでいる者もいれば酒を口すらにしていない者もいた。


 統一感があることとすれば全員が地人ではなく人間だということだろうか。だからナナはこの空間に安堵することができた。だがナナにとってそんなことはどうでもよかった。


「四八目さん」


「んぁ?」


 酒瓶を片手で持ち上げ、ぐびぐびと飲み干す四八目に動じず、ナナは話を続けた。


「香花さんってここに来るんですか?」


「んっぷ……ふう、なんだお前何も聞かされていねえのか?」


「……はい」


「しっしっし、心配はいらねえさ。次期にお前の前に現れるさ」


「本当ですか?」


「ああ、本当だともよ、うっぷ」


 酒の勢いで言ったんじゃあないだろうな。今にも倒れそうなほどに四八目は態勢が安定していなかった。その勢いのまま、四八目は少し離れた先にあるクーラーボックスへ手を付け、ビール缶を取り出した。そうして一時の迷いもなく、プルタブを開けた。


「自分で持ってきたお酒あるじゃないですか」


「うるせぇ! 結局俺もここの費用を払うんだ! だからこっち飲んだほうが得だろうよ! 缶は好きじゃねえけど!」


 そうほざくもしっかり飲み口を唇につけ、一気に流し込んだ。四八目の言うことに信憑性はなかった。香花が来るという事もでっち上げかもしれない。


 そんな時だった。


 ガチャ。


 後ろのスタッフ専用口のドアが勝手に開いた。ナナが毎日、珈々を起こしに行く際、開閉するあのドアだ。もちろんこのドアは自動ドアでもないし、心霊現象でもない。誰かが奥からドアを開けたのだ。


 それにナナはそっと反応した。ドアの奥へ誰かが入っていった情景なんて見覚えがなく、元々そのドアを使う人は珈々とナナに限られている。


 ドアはひっそりと開き続け、音をたてないようにゆっくりと動く。


「あら四八目、もう酔っ払ってるじゃない。ったく今から演説だってのに。……ナナも一緒なのね」


 聞き覚えのある声。今朝もこの声を聞いた。

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