四話 解決

 洗いざらいすべてを珈々に話した。自然と口がスムーズに動いて、言葉に詰まることも多々あったが、口数の少ないナナがここまで話すことは今までになかった。


「ふーん、なるほどねぇ。ナナちゃんもいろいろと抱え込んでるわけかぁ」


 話終わった後、気恥ずかしさからナナはしばらく珈々の顔を直視することができなかった。そのころには、窓の外は暗闇を纏っており、かなりの時間が経過していた。


 珈々が意外そうな表情を浮かべながら、テーブルの木目をしばしば眺めていた。ナナの悩みは確かに珈々に伝わっている様子だった。


「ふーん……」ともう一度小さく呟くと、難しい顔をして天井を見上げた。蛇口が上手くしまっていなかったのか、ぽたぽたと水滴が跳ねる音だけが静かにこだましていた。


「あのう、珈々さん?」


 静寂を断ち切ろうとナナが珈々を伺う。何を考え込んでいるのか、はたまた模索しているのか。ナナは気になった。


 先ほどの得意げな感じはどこに行ったのだろうか。珈々は弱弱しく申し訳なさそうに口を開いた。


「香花の内情まではさすがに分からないわぁ。ごめんねぇ、ナナちゃん。あの子がナナちゃんをどう思っているのか、聞いたこともなくて……」


「そ、そうですか……」


 珈々からしてもナナのような存在は始めてだったらしい。香花が人助けをすることは珍しいことでもないらしいが、ナナのように自分の生活を切り詰めてでも面倒を見ることまでしなかったそうだ。


「寧ろ私が教えてほしいくらいよぉ。まあ、さっきも言った通りナナちゃんは悪い人じゃないから惹かれるのも分かるけどぉ。それにしても面倒見過ぎって言うか」


「そうですよね、どうして私なんか……」


「……まあいずれにしてもぉ、香花がナナちゃんのことをどう想っているのかは、はっきり聞いておいたほうがいいわねぇ」


「えぇ、でもどう聞けば……私のことがせ、性的に好きか……なんて面と向かっていえないですし……」


「ナナちゃん自身は香花のことそう見てはいないんでしょ?」


「ええ、まあ……香花さんにはすごい感謝してますし恩人だと思ってますけど恋人になりたいかって言われたら……よく分からなくて」


「じゃあ、そう返答するしかないわねぇ、香花の気持ちだって分からないわけだしぃ」


「で、でもそれでもし、香花さんにそんな気がなかったら……私」


 今の関係が壊れてしまうことにナナはひどく怯えていた。そんな引っ込み思案なナナに珈々はていっと人差し指で頭を突いた。


「あうっ」と体制を崩すと、珈々はそのまま人差し指をナナに指した。


「香花が傷つくのとナナちゃんが赤っ恥かくの、どっちがいい?」


 変わらない笑みで問いかけてきた。その答えは簡単だった。訊かれたとき、不意にも悲しげな香花の顔が過った。そうなってしまうと自分は香花を助けることはできない。加害者なのだから。そばに寄り添うことすら許されないのだ。


「訊くまでもないって感じねぇ」


 一刻も早く香花に会いたかった。すぐにでもこの場所を離れたかった。だが、ナナの元に香花自らが現れるのはもう、すぐのことだった。

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