第35話 禍々しい見た目
外側の肉を切り取ると背骨と対面にある竜骨が残りその中に内蔵がある。
「何かが生まれてきそうな禍々しい見た目だな」
「モンスターだし、有り得るかも〜」
「冗談はさておき、ここからはどうやるんだ?」
「竜骨を外すんだけど大き過ぎるから、外せる大きさに割っていくよ」
「硬そうだが大丈夫か?」
「2人で一緒に叩けばいけそうかな」
「ぶっ飛ばさないように前後から叩こう。じゃ、いくぞ! せーのっ!」
外肉を取り払った塊を挟んでアリシアとリコッタは中にある内蔵にダメージがいかないように力を加減して拳を叩き込む。
大砲にも似た音と衝撃の後に拳が当たったところから亀裂が入って竜骨全体に行き渡る。
「いい感じに割れたね」
「そこそこ硬かったな。でも、これで次の工程に移れるな」
「うん、ここからは欲しい臓器を切り取っていくだけだから簡単だよ」
「欲しい臓器?」
「外肉だけでもかなりの量だったから臓器全部は保存する場所がないの。だから、厳選して取って、残りは離れた所からこっちを見てるモンスターにあげようと思うの」
「モンスター? ……いつの間に……」
リコッタが周囲へ目を向けると草木や岩の陰からこちらを窺っているモンスターが複数見えた。
モンスター達が寄って来ないのは本能的にアリシアやリコッタを恐れて警戒しているから。
しかし、モンスター達も空腹と目の前にある肉に涎を抑えきれていなかった。
「めちゃくちゃ涎を垂れ流してるぞ……」
「ね? いいでしょ? あの子達にあげても」
「まぁ、持って帰っても無駄になるならアイツらにくれてやるか。それでどれを持って帰るんだ?」
「うーんっとねー。ハツかな」
「ハツ? 何だそれ」
「心臓だよ。これが一番質がいいから」
「よーし! ちゃちゃっと取って帰ろうぜ。血なまぐさいから店開ける前に風呂入りてぇからさ」
「そうだね。結構汚れたもんね」
2人は頭の先からつま先まで血でドロドロだった。道端で見かけても目を合わせたくないくらいに。
心臓を切り取ったアリシアとリコッタは運搬をハクアに任せて先に店へ戻り、サッと風呂に入って着替え運ばれた肉を切り分けてショーケースと冷蔵・冷凍庫に入れた。
「これでお店閉めなくていいね」
「ああ、当分は大丈夫そうだな。あとでミリアにも言っておかないとな」
「そうだね。あれ? そういえば、ハクアちゃんは?」
「ん? 言われてみれば、さっきから姿が見えないな」
店内を見回していると、鍵の掛かった入口ドアをお構い無しに力ずくで開け放ってハクアが店の中へやってきた。
「かーんせーいっ! 見て見て! ハクちゃんの芸術作品を!」
「入口を壊すんじゃねぇよ」
「なになに? 芸術?」
「いいからこっちこいっ!」
ハクアに手を引かれて外へ出たアリシアとリコッタは芸術作品と言われるものを見て口をポカンと開けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます