第33話 なめんなっ!
「むぅ……ハクアちゃんにばっかり優しくして……ちゃんとニワトリさん狩ってきたんだから少しは私にも優しくして欲しい……」
しょんぼりが喋っているうちに段々と涙目に。アリシアに厳しいリコッタもこの反応には困り、アリシアが完全に泣かないように頭を撫でてフォローをいれる。
「そ、そうか。よく頑張ったな、アリシア。エライ、エライ」
「へへへ」
リコッタの咄嗟に行ったフォローでアリシアは機嫌を取り戻し、涙目から一転して照れ笑いを浮かべる。
「それで? 狩ってきたコケトリスは?」
「お肉の鮮度が落ちるから、気絶させてスモル町の人達に王都の近くに運んで貰ったの。大きくて搬入出来ないし、捌くにしても町中でやったら解体ショーみたいになっちゃうから」
アリシアの機転にリコッタは感心してもう1度頭を撫でた。
「ナイス判断だ、アリシア」
「えへへ〜、それほどでも〜」
「じゃあ早速、捌きに行くか。ハクアはどうする? オイラ達が戻って来るまで寝ていてもいいぞ?」
「一緒に行く! 捌くのを見てみたいってわけ! ハクちゃんは勉強家だから」
「決まりだね! ニワトリさんの所へしゅっぱーつ!」
王都を囲う高く分厚い壁の外。町からは見えにくいように雑木林の陰にコケトリスを積んだ荷馬車が待機していた。
そこへやってきたアリシア一行は荷馬車からコケトリスを降ろし、息の根を止めて解体を始める。
品質低下の進行を少しでも軽減する為に首を落とし血抜きをしながら、羽根を毟りとっていく。
「うへぇー。取った首がハクちゃんを見てる」
「アリシア。羽根を全部取ればいいのか?」
「うん。ハクアちゃんも首と睨めっこしてないで手伝って」
「ハクちゃんもやるの?」
「これくらいなら出来るでしょ?」
「テメェッ! ハクちゃんをなめんなっ! 羽根を毟るくらいハクちゃん1人であっという間に出来るわっ! 退け!」
アリシアとリコッタを押し退けてコケトリスの前に立つハクア。
「一体何をする気なんだ? 何にせよ、お手並み拝見だな」
「ハクアちゃーん、頑張って〜」
観察と声援の中ハクアが両手を開いて前に突き出すと、尻尾がピンッとなって毛が逆立ちコケトリスの周囲の地面から白い触手のような物が沢山現れた。
「何かわからないけど、すご〜い!」
「魔法の類いか? それにしても、この数……並大抵の力では出せそうにない数だ」
光景に圧巻する2人を他所に、ハクアは触手のような物を操って言葉通りあっという間にコケトリスの羽根を毟りとった。
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