第32話 おたふく風邪か?
帰りを急ぐアリシアは馬車を用意して貰ってすぐに出発。
疲れていたアリシアとハクアは移動中に眠り、店へ到着する頃にウラジールに起こしてもらった。
「2人とも起きて。もうすぐ着くよ」
「うーん……おはよぉ、ウラジールさん。あれ? ハクアちゃんは?」
「隅っこでまだ寝てるよ」
「ハクアちゃーん、起きてー」
体を揺さぶって起こすと薄らを目を開けたハクアは眉間に皺を寄せ、
「うっさい! ハクちゃんはまだお眠なんだよ!」
ご機嫌斜めの様子。
しかし、店へ到着するまで後僅か。ハクアに合わせていてはその後の予定が狂う。
そこでアリシアはハクアを起こすべく頬へ起きるまで軽く往復ビンタをした。
「おーきーてー。起きるまで続けるよー?」
アリシア的には撫でているような感覚の往復ビンタ。だが、音や威力は常人からするとただの折檻だった。
「痛い、痛い! もう起きたからやめろっ!」
「え? なんて? 起きた?」
ビンタの音でうまくアリシアまで声が届かない。
「やめろって言ってんだろっ!」
2回目の静止にやっとアリシアの手が止まる。
「やっと起きたー! あれ? キミ、誰?」
「ハクちゃんはハクちゃんだ!」
「ハクアちゃん? 違うよ? ハクアちゃんはもっとこう……可愛いかったもん」
「テメェに叩かれたからハクちゃんのぷにぷにほっぺが腫れたんだよ!」
「そっかぁ。てへへ、やっちゃった」
ハクアの頬は『てへへ』で許されるレベルを超えていた。赤く腫れ上がっていて、まるでおたふく風邪。
そうこうしている内にヒリヒリする頬摩るハクアと笑いこけるアリシアを乗せた馬車はミートマスターの前に到着した。
馬車から下りてウラジールと別れたアリシアはハクアを連れて店の中を案内した後、2階へ行き部屋を選ばせる。
「ここが居住スペースだよ。1番手前の右がリコちゃんのお部屋で奥の左右が私とミリちゃんのお部屋。他は空いてるから好きなお部屋を選んでね」
「じゃあ乳デカ女の部屋から遠い1番手前の左」
「えー!? 何で?」
「テメェが叩かれたくからだろっ! 近くは怖いんだよっ!」
「もう叩かないよ?」
「叩かなくても何かするかもしれないだろ! 怖いからハクちゃんはここがいい!」
「もー、仕方ないなぁ」
怯えるハクアと何故かやれやれといった感じを出しているアリシアが話しているとリコッタが部屋から出てきた。
「早朝から騒がしいな」
「リコちゃん、ただいま〜」
「早かったな、アリシア」
アリシアと会話をするリコッタを見てハクアは少し驚く。
「ひぃっ! コイツも乳がデカい!」
「この子は?」
「ハクアちゃんだよ。拾ったの」
「勧誘されたんだよ! ハクちゃんを野良みたいに言うな!」
「元気はいいようだが、その顔……おたふく風邪か?」
「この乳デカメイドに叩かれたんだよっ!」
「そうか、すまんな。アリシアはアホなだけだから悪気はないと思うんだ。だから、許してやってくれ」
「アホなら仕方ないか」
アリシアがアホだという事に何故か納得するハクア。
「次に何かあったらオイラに言ってくれ。お仕置するからさ」
「はいっ!」
口が悪いハクアは返事だけは良い。
散々バカにされたアリシアはハクアとリコッタの会話の区切りがついたところで拗ねた感じで口を開いた。
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