第31話 優秀とは

 アリシアに負けず劣らず自論を通そうとするハクアだが、アリシアのが一枚上手。

 難癖を付けるハクアを相手をやめ、倒れているコケトリスのクチバシを掴んで引き摺り始めた。


「ハクアちゃん可愛いからもっとお話してたいけど、私急いでるから行くね」


「可愛い? えへ、えへへ。可愛いだなんてそんな〜。まぁ可愛いんだけど……って、テメェッ! それはハクちゃんのって言ってんだろ!」


 慌ててアリシアに飛び付いてしがみつくも、アリシアは構わずコケトリスと追い縋るハクアを引き摺って木をなぎ倒しながら林の中を歩いて行く。

 林を抜けると丁度、準備を整えた町の人達がやってきた。


「おーい、アリシアちゃーん!」


「あっ、ウラジールさん」


 姿を見て駆け寄ってくるウラジールとアリシアは足を止めて話す。


「ナイスタイミングだよ、ウラジールさん」


「ナイスタイミング? って、うおっ!? 本当にコケトリスを倒したのかい!?」


「うん。お肉が悪くなっちゃうから気絶させただけだけどね」


「ははは……気絶させただけねぇ……これじゃあ俺達は要らなかったかな」


「要らない事ないよ。みんなにはこれから私のお店のある町までニワトリさんを運んで貰う大事な役割があるんだもん。安心して2・3日は目を覚まさないように調節して叩いたから」


「そうだったね。特大の荷馬車を用意したから、すまないがそこに乗せてくれないかい? 俺達では重くて持ち上げられないよ。ここまで引き摺ってきたアリシアちゃんなら出来るだろ?」


「お易い御用だよ」


 到着した荷馬車にコケトリスを乗せると町の人達は数人掛りで縄をかけ、アリシアから地図を貰い町へ向けて荷馬車を走らせた。

 アリシアを送る為に残ったウラジールはそこでやっとアリシアにしがみついているハクアに気付く。


「あれ? 君はあの時の女の子……生きてたんだね。良かった」


「良くねぇわ! おっさん!」


「お、おっさん!? ……何か凄く怒っているようだけど、どうしたんだい?」


「どうしたもこうしたも、この乳デカ女がハクちゃんの獲物を横取りしたから怒ってるってわけ!」


「横取り? あー、なるほど」


 両者と話をしているウラジールはハクアの言葉で何となく経緯を察した。


「ハクアちゃんと私は横取りのお揃いなの」


「お揃いとかじゃねぇわ! 乳デカ女!」


「乳デカ女? ハクアちゃんはおっぱいちっちゃいね」


「バカにしてんのか、テメェッ!」


 2人のやり取りを温かい目で見ていたウラジールは笑い出し、


「ははは。お揃いはいいね。君達を見ているとまるで仲の良い姉妹みたいで何だかほっこりした気分になるよ」


「おっさんは黙ってろ! こんなのと姉妹だったら病むわ!」


「えー!? 私はハクアちゃんみたいな妹が居たら毎日が楽しいと思うけどなー」


「ハクちゃんを勝手に妹にするな!」


「いいじゃん……あっ、そうだ! ねぇ、ハクアちゃん。私のお店で住み込みで働かない?」


「はあ? ハクちゃんは怒ってんだけど? 何で勧誘してんだよ!」


「怒るのは後でも出来るでしょ? 勧誘は今しか出来ないから」


「確かに……」


「で? どうする?」


「何でハクちゃんを勧誘したのか聞かせろ! その答えで決める」


「うーんと、従業員が足りないってのもあるけど、やっぱり人材は優秀な方がいいと思って。その点、ハクアちゃんはシア等級A2はあるから」


 アリシアの言う優秀とは技術や人柄的なものだけではなく、肉として優秀かどうかも含まれている。


「シア等級が何かわからないけど、ハクちゃんが優秀だから誘ったってわけ?」


「そうだよ〜」


「えへへ、優秀だなんてそんな〜……ま、優秀だけど」


「勧誘した理由を言ったけどどうする?」


「ハクちゃんは優秀だから誘いは断らない!」


「じゃ、決まりだね。ウラジールさん、ハクアちゃんと私を送っていってくれる?」


「話は纏まったようだね。町に帰って馬車を用意するから行こうか」


「うん」


「はいっ!」


 ウラジールに帰りの手配を頼み、アリシア達は一旦スモル町に向かった。

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