第29話 ショックな事

 夕方頃にようやくスモル町に到着。

 町の雰囲気は穏やか建物と建物の間隔は広く間には木などが植えられている。町自体の広さはそこそこあるが、人口数は少なく活気はあまりない。


「静かな町だね」


「帝国の領地と言っても端の方の田舎町だからね。活気づくほど人も住んで居ないし、訪れる人も少ないだけだよ」


「のんびりしてていいじゃん」


「はは、そう言ってくれると嬉しいよ」


「でも……」


「でも?」


「何だか見掛ける人みんな疲れてるみたい。やっぱりこれってニワトリさんのせい?」


「そうなんだが……10日程前にショックな事があってね」


「ショックな事?」


「この話はウチに着いてから話そう。夕食を食べながらね」


「え!? ご飯食べさせてくれるの!?」


「もちろんさ。コケトリスを倒そうと来てくれた人を空腹で放置なんてしたら町の人に顔向け出来なくなってしまうからね」


「ありがとう! ご飯、ご飯〜!」


 ウラジールの家へ行き夕食をご馳走になり話を聞く。


「妻の料理はどうだった?」


「すごく美味しかったよ」


「そりゃ良かった。夕食も食べた事だし、さっきの話の続きをしようか」


「ショックな事ってやつ?」


「そうそう。コケトリスが出没しだしてこの町は疲弊していってね。冒険者に依頼を出せばいいだけの話なんだけど、もともとそこまで栄えていない田舎町だからコケトリスを倒せる腕利きの冒険者に依頼出来るほどの報奨金を捻出するのも難しくてね」


「強い冒険者って高いんだね〜」


「高いさ。彼らは命を掛けてその仕事をしているんだからね。まぁ俺達は払えないから依頼を出せないんだけど」


「それがショックな事?」


「いや、ショックな事ってのはその依頼を出せなくて困っているところに現れた少女の事なんだ」


「女の子がどうしたの?」


「見た事もないその少女はこの町を助けるのが試験だとかワケのわからない事を言って、俺達が止めるのも無視してコケトリスの所へ行ったきり帰って来ないんだ」


「食べられちゃったのかなー?」


「恐らくそうだろう。アリシアちゃんくらいの年頃の女の子を見殺しにしたみたいになって、それがショックでね」


「ふーん。でも、私は大丈夫だよ」


「その女の子も同じような事を言ってたよ」


「何か気が合いそう」


「出来たらアリシアちゃんを止めたいけど、無理だろ?」


「うん」


「なら、俺達はもう止めない。その代わりと言ってはなんだが、俺達も後から準備してコケトリスの所へ向かうよ。女の子に頼ってばかりじゃ情けないからね」


「じゃ、運ぶの手伝ってね」


「その準備も一応しておくよ」


「ありがと。お腹いっぱいになったし、そろそろ行くね」


「健闘を祈るよ」


 食事と話を済ませたアリシアは暗くなり始めた外へ出て行った。

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